災害時のトイレはどうする?
携帯トイレの必要数・使い方・やってはいけないこと

水と食料より先に困るのが、実はトイレです。この記事では、携帯トイレの必要数の計算、正しい使い方、断水時に絶対やってはいけないことまで、家庭のトイレ対策を全部まとめました。

災害用の携帯トイレと凝固剤、ポリ袋を用意した自宅トイレのイラスト

災害時、いちばん早く困るのは「トイレ」

食事は数時間がまんできても、トイレはがまんできません。過去の大地震では、発災から3時間以内にトイレに行きたくなった人が約3人に1人という調査もあり、水や食料よりも先に必要になるのがトイレです。

それなのに、トイレの備えは水・食料に比べて後回しにされがちです。トイレをがまんするために水分を控えると、脱水や、車中泊避難で問題になるエコノミークラス症候群(足の血管に血の固まりができる病気)の危険が高まります。つまりトイレの備えは健康と命に直結する備えなのです。

この記事の結論

①携帯トイレを「1人1日5回×7日分」用意する ②地震後は水洗トイレを流さない ③使い方は「便器にかぶせて、固めて、しばって、ためる」。この3つを押さえれば、家庭のトイレ対策はほぼ完成です。

なぜ災害でトイレが使えなくなるのか

水洗トイレが使えなくなる原因は1つではありません。自分の家がどのパターンに当てはまりそうかを知っておくと、対策の優先順位が見えてきます。

災害でトイレが使えなくなる主な原因
原因何が起きるか起きやすいケース
断水タンクに水がたまらず流せない地震・水道管の破損・浄水場の停止
排水管の破損流すと汚水が漏れる・逆流する地震後の戸建て・マンション共通
停電ポンプで給水するマンションで水が止まる。温水洗浄便座や電動ポンプ式トイレも停止タワーマンション・高層階
下水処理場の被災地域全体で下水が流せなくなる大規模地震・水害

ポイントは、水があっても排水管が壊れていたら流せないということです。「お風呂に水をためてあるから大丈夫」と思っている人ほど、次の章を読んでください。

絶対にやってはいけない:地震後に「バケツの水で流す」

断水時の知恵としてよく紹介される「バケツの水で流す」方法は、地震の後には使ってはいけません。理由は排水管です。

マンションでは特に厳禁

集合住宅の排水管は全戸でつながっています。上の階の1軒が流しただけで、下の階の部屋が汚水まみれになった事例が実際にあります。管理会社や管理組合から「排水管の点検が終わり、流してOK」という連絡があるまで、水洗トイレは使わないのが原則です。詳しくはマンション防災ガイドもご覧ください。

では地震後どうすればいいか。答えはシンプルで、水洗トイレを「使わない」で、便器に携帯トイレをかぶせて使うです。次の章で必要な数を計算しましょう。

携帯トイレの必要数:1人1日5回×7日分【家族人数別早見表】

人がトイレに行く回数は、1日およそ5回が平均といわれます。断水の復旧は停電より時間がかかることが多く、大きな地震では数週間かかった例もあるため、備蓄は最低3日・できれば1週間分を目安にします。

携帯トイレの必要回数早見表(1人1日5回で計算)
家族の人数3日分1週間分
1人15回分35回分
2人30回分70回分
3人45回分105回分
4人60回分140回分
5人75回分175回分

「140回分なんて多すぎる」と思うかもしれませんが、携帯トイレは50回分でも2Lペットボトル数本分ほどの箱に収まり、押し入れの隅に置けるサイズです。値段も1回あたり数十円〜100円程度。水の備蓄より場所を取らず、安いのに、効果は絶大です。

おなかが弱い人・小さい子がいる家庭は多めに

災害時は環境の変化とストレスで、おなかを壊す人が増えます。家族に胃腸が弱い人、おむつが外れたばかりの子ども、頻尿ぎみの高齢者がいる場合は、2〜3割多めに見ておくと安心です。

携帯トイレの種類と選び方

「災害用トイレ」にはいくつか種類があります。家庭備蓄の主役は①の携帯トイレです。

災害用トイレの種類
種類特徴向いている用途
①携帯トイレ(袋+凝固剤)自宅の便器にかぶせて使う袋タイプ。凝固剤で尿を固める。1回数十円〜家庭備蓄の主役。自宅避難・車内
②簡易トイレ(組立便座タイプ)段ボールやプラスチックの便座を組み立てて使う便器が使えない場合・屋外・テント
③車載用トイレコンパクトで車内で使いやすい形状車中泊避難・渋滞対策

選ぶときのチェックポイント

携帯トイレの使い方5ステップ(一度は練習を)

使い方はかんたんですが、災害前に1回だけでも家族で練習しておくことを強くおすすめします。初めてが本番だと、袋のセットに戸惑ったり、子どもが嫌がったりします。

  1. 便器の水を抜くか、1枚目のポリ袋(45L)を便座の下にかぶせる。便器の水が袋につかないようにするためのカバーです。この1枚目は交換せず使い回します。
  2. 2枚目(携帯トイレの袋)を便座の上からかぶせる。用を足すのはこの袋の中です。
  3. 用を足したら、凝固剤をふりかける。数十秒でゼリー状に固まります。
  4. 2枚目の袋だけを外し、空気を抜いてしっかり結ぶ。防臭袋があれば二重にします。
  5. ふた付きの容器(ペール缶・バケツ)にためる。ベランダや屋外の直射日光の当たらない場所が理想です。
携帯トイレの使い方の図解。便器に袋をかぶせて凝固剤で固める手順
1枚目の袋は「便器を守るカバー」、2枚目が「使い捨てのトイレ」。この2枚方式が基本。

練習に使った1回分はムダにならない

練習で使った携帯トイレは「水を入れて固まり方を見る」だけでも十分です。凝固剤がどれくらいの速さで固まるかを見ておくと、本番の安心感がまったく違います。防災の日(9月1日)や買い替えのタイミングに、家族イベントとしてやってみてください。

におい対策と衛生管理

携帯トイレ生活で一番のストレスは「におい」です。次の対策で大幅に軽くできます。

断水中の衛生対策全般(手洗い・食器・お風呂の代わり)は断水ガイドで詳しく解説しています。

使用済み携帯トイレの保管と捨て方

使用済みの携帯トイレは、ごみ収集が再開するまで自宅で保管することになります。1週間分×4人家族なら140袋。意外な量になるので、保管場所も決めておきましょう。

女性・子ども・高齢者への配慮

女性

子ども

高齢者

災害時のトイレQ&A

Q. 携帯トイレがない!今すぐできる代用方法は?

A. 45Lポリ袋2枚+吸水材で応急対応できます。1枚目を便器のカバーに、2枚目を便座にかぶせ、中に細かくちぎった新聞紙・紙おむつ・ペットシーツなどを入れて吸わせます。ただし専用品より固まらず、においも強いので、あくまで「買い足すまでのつなぎ」と考えてください。

Q. 断水だけで排水管が無事なら、流してもいい?

A. 台風などで「断水だけ」が確実な場合は、バケツ1杯(6〜8L)の水を一気に流し込む方法が使えます。ただし地震の後は排水管の無事が確認できるまでNG。また、流すたびに貴重な生活用水を6L以上消費するので、携帯トイレとの併用が現実的です。

Q. マンションの「災害用マンホールトイレ」って何?

A. 敷地内のマンホールの上に便座とテントを設置して使う共用トイレです。設置には管理組合の備えが必要なので、自分のマンションにあるか一度確認を。あっても夜間や悪天候にはつらいので、自宅用の携帯トイレは別に必要です。

Q. 凝固剤に使用期限はある?

A. 多くの製品は10〜15年です。ただし高温多湿の場所では吸湿して固まりが悪くなることがあるため、直射日光の当たらない場所で保管し、パッケージの期限を年1回チェックしましょう。