最優先:片付ける前に「写真」を撮る
被災すると、多くの人がまず片付けを始めます。気持ちはよく分かりますが、片付けてしまうと被害を証明できなくなります。これが後の手続きで最大の分かれ目になります。
この記事の結論
①片付け前に写真(外観4方向・浸水の高さ・壊れた家財)②市区町村で罹災証明書を申請③証明書をもとに支援金・減免・修理制度に申し込む。この順番を知っているだけで、受け取れる支援が変わります。
撮っておくべき写真
- 建物の外観を四方向から(表・裏・左右。全体が入るように離れて撮る)
- 浸水した高さが分かる写真(メジャーや身近な物を当てて、床からの高さが分かるように)
- 被害を受けた部屋の全景(どの部屋かが分かるように、入口から一枚)
- 壊れた家財のアップ(家電・家具ごとに。型番が写っているとなお良い)
- 屋根・外壁・基礎のひび割れ
- 撮影日が記録されるよう、スマホの日時設定を確認しておく
片付けを待てないときは
衛生上、泥や汚水をすぐ片付けたい場合もあります。その場合も「撮ってから片付ける」を徹底してください。数分の作業で、後の手続きが大きく変わります。捨てる家財も、捨てる前に一枚撮っておきます。
時系列でやること
| 時期 | やること |
|---|---|
| 直後 | 安全確保/家族の安否確認/けがの応急手当/危険なら避難 |
| 1〜3日 | 被害状況の写真撮影/ライフラインの状況確認/必要なら避難所へ/在宅避難なら備蓄で生活 |
| 1週間前後 | 市区町村の窓口で罹災証明書の申請/保険会社への連絡/応急危険度判定の結果を確認 |
| 2週間〜1か月 | 被害認定調査を受ける/罹災証明書の交付/各種支援制度の申請開始 |
| 1か月以降 | 支援金・仮設住宅・応急修理などの手続き/必要なら再調査の申し出/片付けにボランティアを依頼 |
災害の規模によって進み方は変わります。大規模災害では、市区町村が特設の相談窓口を設けたり、申請期限を延長したりすることがあるので、必ず自治体の広報を確認してください。
罹災証明書とは:すべての支援の入口
罹災証明書は、住まいがどの程度の被害を受けたかを市区町村が証明する書類です。名前は地味ですが、これがないと多くの支援が受けられません。
罹災証明書が必要になる場面
- 被災者生活再建支援金などの支援金の申請
- 住宅の応急修理制度の申し込み
- 仮設住宅・みなし仮設への入居申し込み
- 税金・国民健康保険料・公共料金などの減免や猶予
- 災害援護資金などの融資の申し込み
- 民間の災害見舞金の請求(勤務先など)
申請の流れ
- 市区町村の窓口に申請する
本人確認書類と、撮っておいた被害の写真を持参します。郵送やオンラインで受け付ける自治体もあります。
- 被害認定調査を受ける
市区町村の職員が自宅を訪れ、被害の程度を調べます。立ち会いを求められることがあります。
- 罹災証明書が交付される
調査結果に基づき、被害の区分が記載された証明書が発行されます。
| 区分 | おおよその状態 |
|---|---|
| 全壊 | 住むことができず、補修しても元に戻すのが難しい状態 |
| 大規模半壊 | 大規模な補修をしなければ住めない状態 |
| 中規模半壊 | 相当規模の補修が必要な状態 |
| 半壊 | 補修すれば元通りに住める程度の損害 |
| 準半壊 | 半壊に至らないが一定の損害がある状態 |
| 一部損壊 | 準半壊にも至らない程度の損害 |
判定に納得できないときは「再調査」を申し出られる
調査は外観を中心に行われるため、内部の被害が反映されないことがあります。判定に疑問があるときは、市区町村に再調査(第2次調査)を申し出ることができます。このとき、撮っておいた写真が強力な材料になります。申し出には期限があるため、交付を受けたら早めに相談してください。
受けられる主な支援制度
支援制度は国・都道府県・市区町村がそれぞれ用意しており、災害の規模や地域によって適用が変わります。金額や条件は改定されることがあるため、必ずお住まいの自治体の最新情報をご確認ください。ここでは、どんな制度があるかの全体像をつかんでください。
| 制度 | 内容 |
|---|---|
| 被災者生活再建支援金 | 住宅の被害程度に応じた「基礎支援金」と、建て直し・補修・賃借など再建方法に応じた「加算支援金」があります。一定規模以上の災害で適用されます |
| 住宅の応急修理制度 | 住み続けるために最低限必要な修理(屋根・外壁・水回りなど)を、自治体が業者に依頼して行う制度。自分で先に修理すると対象外になることがあるため、着工前に相談を |
| 応急仮設住宅 | 建設型の仮設住宅と、民間賃貸を借り上げる「みなし仮設」があります |
| 災害援護資金・生活福祉資金 | 生活再建のための貸付制度 |
| 税・保険料の減免、猶予 | 所得税・住民税・国民健康保険料・年金保険料などの減免や納付猶予 |
| 災害弔慰金・災害障害見舞金 | 亡くなった方の遺族や、重い障害が残った方への給付 |
| 公共料金の特別措置 | 電気・ガス・水道・通信料金の支払い期限延長など |
「先に自分で修理」に注意
応急修理制度は、自治体を通して修理する仕組みです。急いで自分で業者に頼んで修理を終えてしまうと、制度の対象外になることがあります。屋根の応急処置(ブルーシートなど)は別として、本格的な修理の前に必ず市区町村へ相談してください。
保険の請求も忘れずに
公的支援とは別に、加入している保険からも支払いを受けられる場合があります。
- 火災保険:風水害・雪害・落雷など。契約内容によって補償範囲が異なります
- 地震保険:地震・噴火・津波による損害。火災保険では補償されません(地震保険のコラムで詳しく解説)
- 自動車保険:車両保険に入っていれば、水没や飛来物による損害が対象になることがあります
- 共済:都道府県民共済、JA共済なども同様に請求できます
保険会社への連絡は早いほうがよく、被害の写真がここでも役立ちます。保険証券が見つからなくても、契約者名と生年月日で照会できることがほとんどです。
片付けとボランティア
浸水した家の片付けは、想像以上の重労働です。ひとりで抱え込まず、災害ボランティアセンターを頼ってください。
- 被災地の社会福祉協議会などが「災害ボランティアセンター」を開設します
- 電話やウェブから、片付けの手伝いを依頼できます
- 依頼は無料ですが、作業内容によって対応できる範囲が決まっています
- 「頼むのは申し訳ない」と感じる方が多いのですが、支援を受けることは想定された仕組みです。遠慮する必要はありません
片付け作業のときの注意
- ゴム手袋・長袖・長靴・マスク・ゴーグルを着用する(汚水には細菌が含まれます)
- けがをしたらすぐ洗って消毒する。破傷風の危険があるため、深い傷は受診を
- 浸水した家電は、乾いて見えても使わない(通電による火災の危険)
- 泥出し→洗浄→乾燥(数週間)→消毒の順。急いで壁を閉じるとカビの原因に
- 夏場は熱中症に注意。こまめに休憩と水分補給を(季節別の注意)
心と体のケアも「手続き」のうち
被災後は、手続きに追われて自分のことが後回しになりがちです。しかし、災害後に体調を崩して亡くなる災害関連死は、地震そのものによる死者数を上回ることもあります。
- 眠れない、food が喉を通らない、涙が出る——これらは異常な状況への正常な反応です
- 自治体や保健所が「こころの相談窓口」を設けます。無料で相談できます
- 子どもの反応については子どもの防災で解説しています
- 高齢の家族は、環境の変化で急に弱ることがあります。高齢者の防災もあわせて
平時にやっておくと、後で助かること
被災後の手続きをスムーズにするために、今のうちにできることがあります。
- 家の外観と各部屋を、平時のうちに写真に撮っておく(被害の前後比較ができます)
- 保険証券・契約内容をスマホで撮影し、クラウドにも保存する
- 通帳・権利証・保険証・マイナンバーカードのコピーを持ち出し袋に
- 高価な家財(家電・家具)の購入時期と型番をメモしておく
- 住宅ローンの契約内容を確認しておく(家が壊れてもローンは残ります)
被災後の手続きQ&A
Q. 賃貸に住んでいます。罹災証明書は必要ですか?
A. 必要です。賃貸でも、住んでいた住宅の被害について罹災証明書が交付されます。家財の損害に対する支援や、税・保険料の減免、転居費用の支援などで使えます。建物自体の補償は大家さんの保険の範囲になります。
Q. 車が水没しました。どこに相談すればいいですか?
A. まず加入している自動車保険(車両保険)の会社へ。水没した車は、乾いた後でもエンジンをかけないでください。ショートによる火災の危険があります。ディーラーや整備工場に相談し、レッカーでの移動を検討してください。
Q. 手続きが多すぎて何から手をつければいいか分かりません。
A. まず罹災証明書の申請だけ済ませてください。それが多くの支援の入口になります。そのうえで、市区町村の被災者相談窓口へ行けば、自分が使える制度を一覧で案内してもらえます。ひとりで調べようとせず、窓口を頼るのが結局いちばん早道です。
Q. 支援金はいつ頃もらえますか?
A. 申請から支給まで数週間から数か月かかるのが一般的です。当面の生活費は自分でまかなう必要があるため、非常時のための現金を手元に用意しておくことも備えのひとつです。