揺れた瞬間にやること・やってはいけないこと
強い揺れは長くても1〜2分。この間にできることは、実はほとんどありません。だからこそ「これだけ」を体に覚えさせます。
揺れている間の3原則
①姿勢を低く ②頭を守る ③揺れが収まるまで動かない。机の下に隠れる、クッションや腕で頭を覆う、寝ていたら布団にもぐって頭を守る。まずこれだけです。
やってはいけないこと
- あわてて外に飛び出す:瓦・ガラス・看板の落下がいちばん危険です
- 揺れの最中に火を消しに行く:今のコンロは大きな揺れで自動停止します。やけどのほうが危険。火の始末は揺れが収まってから
- 裸足で歩き回る:割れたガラスでのけがは地震後の定番の負傷です。スリッパか靴を履いてから動く
- エレベーターで避難する:閉じ込めの危険。必ず階段で
揺れが収まったら(最初の10分)
- 家族の無事と、足元・頭上の安全を確認(靴を履く)
- 火の始末とガスの元栓。ガス臭いときは換気扇・電気に触らず窓を開けて外へ
- ドアや窓を開けて避難経路を確保(建物がゆがむと開かなくなります)
- テレビ・ラジオ・スマホで津波・火災など周辺の情報を確認。沿岸部なら迷わず高台へ
- 外へ避難するときはブレーカーを落とし、ガスの元栓を閉める
家具の固定:防災グッズを買う前にやる最優先事項
近年の大きな地震では、けがをした人の3〜5割が「家具類の転倒・落下・移動」によるものと報告されています。倒れた家具は、けがだけでなく、避難路をふさぐ・火災の原因になる・下敷きで逃げ遅れるなど、被害を連鎖させます。
優先順位のつけ方
- 寝室:寝ている間は逃げられません。ベッド・布団のまわりに倒れてくる家具を「置かない」が最優先。無理なら固定
- 子ども部屋・高齢者の部屋:同上
- リビング・キッチン:テレビは粘着マット+ベルト、食器棚は扉の開放防止ラッチ+ガラス飛散防止フィルム、冷蔵庫は専用ベルトで
- 玄関までの通路:避難路に倒れる物がないか
固定方法の選び方
- L字金具(ネジ止め):最も確実。壁の「下地(柱)」に留めるのがコツ。下地探しの道具はホームセンターで数百円
- 突っ張り棒(ポール式):賃貸でもOK。天板の奥側(壁側)に2本、天井側は硬い面に。ストッパー(くさび)や粘着マットと併用すると効果が数倍になります
- ストッパー・粘着マット:単独では補助。ほかの方法との併用が前提
- ガラス飛散防止フィルム:窓・食器棚・額縁に。割れても飛び散らないだけで、けがのリスクが大きく減ります
通電火災と感震ブレーカー:地震火災の半分は「電気」
東日本大震災で原因が特定された火災のうち、過半数は電気関係でした。代表例が「通電火災」。停電が復旧した瞬間に、倒れた電気ストーブや傷ついたコードから出火する火災で、避難して誰もいない家で起きるため発見が遅れます。
- 避難するときはブレーカーを落とす。これだけで通電火災の多くは防げます
- 感震ブレーカーを付ければ、強い揺れを感知して自動で電気を遮断してくれます。分電盤タイプ(工事あり)からコンセントタイプ、数千円の簡易タイプまであり、自治体によっては購入補助もあります
- 電気ストーブ・熱帯魚ヒーターなど熱の出る家電の周りに燃えやすい物を置かない
- 復旧後に電気を戻すときは、家電のプラグを抜き、においや焦げがないか確認してから1つずつ
在宅避難か、避難所か:判断の基準
- 避難所へ行く:建物に大きな損傷(傾き・壁の大きなひび・ドアが開かない)、周辺で火災、津波・土砂災害の恐れ、余震で倒壊しそう
- 在宅避難でよい:建物が無事で、上記の危険がない。電気・水道が止まっていても、備蓄があれば自宅のほうが安全で快適です
在宅避難でも、避難所は「物資・情報・支援の受け取り拠点」として使えます。遠慮せず情報を取りに行きましょう。
家族の安否確認:連絡手段を「決めておく」
災害直後は電話がつながりにくくなります。家族がバラバラの時間帯(平日昼など)に被災した場合の集合場所と連絡手段を、紙に書いて共有しておくのが基本です。
- 災害用伝言ダイヤル「171」:自宅の電話番号あてに音声の伝言を残せます。毎月1日・15日などに体験利用ができるので、家族で一度練習を
- 災害用伝言板(web171・各携帯会社):文字で安否を登録・確認
- SNS・LINE:通話よりつながりやすい傾向。家族グループを作っておく
- 遠方の親戚を「中継点」にする:被災地内どうしより、被災地外への電話のほうがつながりやすいため、「全員が◯◯おばさんに連絡」と決めておく方法は今も有効です
地震への備えチェックリスト
- 寝室に倒れてくる家具がない(または固定済み)
- 背の高い家具はL字金具か突っ張り棒+ストッパーで固定した
- 食器棚・窓に飛散防止フィルムを貼った
- 寝室に懐中電灯とスリッパ(または靴)を置いた
- 感震ブレーカーを設置した(または避難時にブレーカーを落とすと家族で共有した)
- 家族の集合場所と連絡手段を紙に書いて共有した
- 171の体験利用を一度やってみた
- 自治体のハザードマップで自宅の揺れやすさ・津波・土砂リスクを確認した
- 非常用持ち出し袋を玄関付近に置いた
- 水・食料の備蓄が最低3日分ある
家具固定の実践:場所別のやり方と道具
「固定が大事なのはわかったけど、実際どうやるの?」に答える実践編です。ホームセンターや通販で手に入る道具で、週末1日あれば主要な家具の固定は完了します。
| 家具・家電 | おすすめの固定方法 | ポイント |
|---|---|---|
| 本棚・食器棚・タンス | L字金具(最強)/突っ張り棒+ストッパーの併用 | ネジ止めできない場合は「突っ張り棒(天井側)+ストッパーか粘着マット(床側)」の上下併用で金具に近い効果 |
| 冷蔵庫 | 専用ベルトで壁と連結 | 背面上部の固定用金具を活用。上に物を置かない |
| テレビ | 粘着マット+背面ベルトで台と連結 | 倒れると画面が凶器に。台ごと固定が理想 |
| 電子レンジ | 粘着マット | 棚の上にあるレンジは飛んできます。低い位置への移動も検討 |
| 食器棚のガラス扉 | 飛散防止フィルム+耐震ラッチ | ラッチは揺れると扉をロックし、中身の飛び出しを防ぐ |
| 吊り下げ照明 | チェーンで複数点留め、またはシーリングライトへ交換 | 振り子のように暴れて天井を壊すことがある |
- 突っ張り棒の正しい付け方:家具の奥側(壁側)に、左右2本。天井側に板をかませて面で支えると効果が上がります。
- 賃貸で壁に穴を開けられない場合:突っ張り棒+床側ストッパーの併用、粘着タイプの固定具、家具の配置換え(倒れても出入口と寝床をふさがない向きに)で対応します。
- 固定より「置かない」が最強:寝室と子ども部屋からは背の高い家具をなくすのが理想です。どうしても置くなら、倒れてもベッドに届かない配置に。
寝室の安全化:夜の地震から身を守る
大地震は夜中に起きるかもしれません。停電で真っ暗、床はガラスまみれ——この状況を想定して寝室を整えます。
- 枕元3点セット:①スリッパか厚底の靴 ②懐中電灯(またはスマホ+モバイルバッテリー)③ホイッスル。枕元の袋や引き出しに常備
- ベッドの位置:窓ガラスのそば・大きな家具の転倒範囲・照明の真下を避ける
- 窓に飛散防止フィルム:カーテンを閉めて寝るだけでもガラスの飛散をある程度防げます
- ドアが開かなくなる事態に備え、寝室にバール代わりになる物や、ベランダ経由の脱出経路を意識しておく
- 停電時自動点灯ライト:コンセントに挿しておくと停電の瞬間に光る保安灯。廊下・寝室に1つずつあると夜の地震で足元が確保できます
地震保険と耐震診断:お金の備えも防災
物の備えと同じくらい大切なのが「住まいとお金」の備えです。
- 地震保険:火災保険だけでは地震による火災・倒壊は補償されません。地震保険は火災保険とセットで加入する公的性格の強い保険で、建物と家財に掛けられます。保険金は「建て直す全額」ではなく生活再建の当面資金という位置づけですが、被災後の生活を大きく左右します。証券の内容を一度確認してみてください。
- 耐震診断:1981年5月以前に建築確認を受けた「旧耐震」の家は、自治体の補助で耐震診断・改修工事の費用支援を受けられることが多いです(2000年以前の木造も要チェック)。「(自治体名) 耐震診断 補助」で検索を。
- 被災後の支援制度:罹災証明書を起点に、被災者生活再建支援金・応急修理制度などが受けられます。「片付け前に写真を撮る」ことだけ覚えておいてください。
地震のQ&A
Q. 揺れたらまず火を消しに走るべき?
A. いいえ。今のコンロの多くは強い揺れで自動消火しますし、揺れの最中に台所へ走るとやけど・転倒のリスクのほうが大きいです。まず自分の頭と体を守り、揺れが収まってから火元を確認してください。
Q. 「地震のときはドアを開けろ」は本当?
A. 建物がゆがむとドアが開かなくなるため、「揺れの合間に避難経路を確保する」こと自体は正しい知識です。ただし優先順位は「身の安全>ドア」。近くにドアがあれば開けておく、程度に考えてください。
Q. 緊急地震速報が鳴ったら何秒ある?
A. 場所によって0秒〜数十秒です。「机の下へ」「頭を守る」「火に近づかない」を体が勝手に動くまで家族で練習しておくと、短い猶予でも活きます。子どもとは「地震ごっこ」として遊び感覚で練習を(子どもの防災参照)。
Q. 地震のあと、ガスの臭いがする気がします。
A. 火気厳禁・換気・元栓を閉めて屋外へ。換気扇や照明のスイッチも触らないでください(火花で引火の恐れ)。屋外からガス会社へ連絡を。都市ガスはマイコンメーターが自動遮断していることも多く、復帰方法はメーターに記載されています。
Q. 津波が心配な地域。何を基準に逃げる?
A. 海の近くで「強い揺れ」または「弱くても長い揺れ」を感じたら、警報を待たずに、高い場所へ、徒歩で、すぐに。これが原則です。「もう少し様子を見る」が最も危険です。避難後は警報が解除されるまで戻らないでください。