住宅火災への備えと初期消火
消火器の使い方・火災警報器・逃げ方の判断

地震や水害の備えはしていても、火災の備えは手つかず——という家庭は少なくありません。でも火災は、いちばん身近で、いちばん「数分の判断」が生死を分ける災害です。

住宅用火災警報器と消火器、初期消火のイラスト

火災は「数分」で手に負えなくなる

火災の怖さは、その速さにあります。小さな炎でも、燃える物があれば数分で天井まで届き、そこから先は家庭用の消火器では歯が立ちません。さらに、火災で亡くなる原因の多くは炎そのものではなく煙による一酸化炭素中毒や窒息です。

つまり火災対策の要は、次の3つに集約されます。

この記事の結論

早く気づく(住宅用火災警報器を全部屋に、10年で交換)②小さいうちに消す(消火器を1本、使い方を知っておく)③あきらめて逃げる(炎が天井に届いたら消火をやめる)。この順番を家族で共有することが、いちばんの火災対策です。

住宅用火災警報器:全部屋への設置と「10年で交換」

住宅用火災警報器は、日本のすべての住宅に設置が義務づけられています。すでに付いているご家庭がほとんどですが、問題は「付いているけれど、もう働いていない」ケースです。

どこに付けるか

住宅用火災警報器の設置場所(自治体の条例により異なる場合があります)
場所必要性備考
寝室全国で義務就寝中の逃げ遅れを防ぐため最優先
階段の上部寝室が2階以上にある場合は義務煙は階段を伝って上がります
台所市町村の条例によって異なる出火が多い場所。設置が推奨されます
居間・子ども部屋任意付けておくと安心

寝室と台所では、適した種類が違います。寝室・階段は「煙式(光電式)」台所は調理の湯気で誤作動しにくい「熱式(定温式)」を選ぶのが一般的です。

10年たったら本体ごと交換を

電池が切れていなくても、内部の電子部品は少しずつ劣化します。設置から10年を目安に、本体ごと交換することが推奨されています。本体に製造年が書かれているので、一度確認してみてください。2006年前後から設置が義務化されたため、一度も交換していない家庭では、すでに交換時期を大きく過ぎている可能性があります。

点検のしかた(1分でできます)

出火原因別・今日からできる対策

住宅火災の出火原因には毎年上位の常連があります。原因が分かっていれば、対策も具体的になります。

こんろ(天ぷら油・消し忘れ)

天ぷら油の火に水は絶対に厳禁

燃えている油に水をかけると、水が一瞬で水蒸気になり、燃えた油を空中に吹き上げて火柱が立ちます。まず換気扇を止めて(火を吸い上げて延焼させないため)、こんろの火を消し、可能なら鍋のふたや大きめの金属製ボウルをかぶせて空気を絶ちます。無理だと感じたらすぐ逃げてください。

たばこ

電気関係(たこ足配線・トラッキング現象)

意外に多いのが電気による出火です。とくにトラッキング現象——コンセントとプラグのすき間にたまったほこりが湿気を吸い、そこに電気が流れて発火する現象——は、留守中でも起こります。

地震のあとの通電火災も電気が原因の火災です。避難時にブレーカーを落とすこと、感震ブレーカーを付けることについては地震への備えで解説しています。

ストーブ・暖房器具

放火

消火器の選び方と使い方4ステップ

住宅用の消火器は、ホームセンターや通販で数千円から購入できます。「使ったことがないから不安」という方が多いのですが、手順はたった4つです。

使い方:ピン・ホース・レバー・根元

  1. 安全ピンを抜く

    上部の黄色いピンを、上に引き抜きます。

  2. ホースを外して火元に向ける

    ホースを固定具から外し、先端をしっかり持ちます。

  3. レバーを強く握る

    上下のレバーを握りしめると薬剤が出ます。放射時間は約15秒しかありません。

  4. 手前から、燃えている物の根元をねらう

    炎の先ではなく燃えている物の根元に向け、ほうきで掃くように左右に振ります。

置き場所と使用期限

置き場所は台所の出入口付近がおすすめです。火元のすぐそばだと、火災時に近づけません。住宅用消火器の使用期限はおおむね5年程度が目安で、本体に表示があります。古い消火器は、腐食した容器が破裂する事故が起きています。さび・変形があるものは絶対に使わず、消防署や販売店に処分方法を相談してください(自治体のごみには出せません)。

消火器以外の初期消火の道具

「消す」から「逃げる」への切り替えライン

火災でいちばん大切な判断が、消火をあきらめるタイミングです。

炎が天井に届いたら、消火をやめて逃げる

これが全国の消防で共通して伝えられている目安です。天井に火が移ると、天井を伝って一気に燃え広がり、部屋全体が短時間で炎に包まれます。身長より高く炎が上がったら、消火器を捨ててでも逃げてください。物は保険で戻せますが、命は戻りません。

また、次のような場合は最初から消火を試みず、すぐに避難と119番通報を優先してください。

煙から身を守る逃げ方

火災の死因の多くは煙です。煙は横に広がる速さが人の歩く速さ、上へ上がる速さは階段を駆け上がる人より速いとされます。逃げ方には要点があります。

逃げられないときの最終手段

出口が炎や煙でふさがれた場合は、次の行動をとります。

持ち出し袋にホイッスルを入れておく理由

煙を吸った状態では大声を出し続けられません。非常用持ち出し袋にホイッスルを入れておくと、少ない息で遠くまで居場所を知らせられます。ベッドの枕元にも1つあると安心です。

119番通報で伝えること

あわてていても、聞かれることは決まっています。落ち着いて、順番に答えれば大丈夫です。

玄関や電話のそばに、住所を書いた紙を貼っておくと、パニックのときでも正確に伝えられます。高齢の家族や子どもがいる家庭では特に有効です。

家庭の火災対策チェックリスト

住宅火災のQ&A

Q. 火災保険に入っていれば安心ですか?

A. 火災保険は建物や家財の損害を補償しますが、地震が原因の火災は対象外です(別途地震保険が必要)。また保険はあくまで「起きた後」の備えで、命は守れません。警報器と避難経路の確認が先です。

Q. マンションでも消火器は必要ですか?

A. 共用部に設置されていることが多いですが、各戸に1本あると初期対応が早くなります。マンションは炎より煙の被害が広がりやすいため、玄関ドアを閉めて煙を廊下に出さないことも大切です。

Q. 服に火がついたらどうすればいいですか?

A. 走ると風で火が大きくなります。その場で止まり、倒れて、転がって火を消してください(ストップ・ドロップ・ロール)。近くに水や毛布があればかぶせます。やけどの手当は応急手当のページで解説しています。

Q. 一人暮らしでも警報器は必要ですか?

A. むしろ必要性が高いです。就寝中の火災に気づかせてくれる人がいないためです。賃貸でも設置は義務なので、付いているか、鳴るかを必ず確認してください。付いていない場合は大家さんや管理会社に相談を。