支援物資は「平均的な大人」向けに届く
災害時の支援物資は、まず水・食料・毛布といった全員に共通するものから届きます。生理用品や下着、乳児用品といった「一部の人にしか必要ないが、その人には絶対に必要な物」は、届くのが遅れたり、サイズや種類が合わなかったりします。
つまり、これらは自分で備えておくしかないのが現実です。
この記事の結論
①生理用品は多めに、常にストックを回す(2周期分が目安)②避難所では着替え・トイレ・夜間の移動に用心する③妊娠中・授乳中は「自分専用の備え」を厚く。この3つが柱です。
生理用品の備蓄:何をどれだけ
災害はいつ起きるか分かりません。生理の時期と重なる可能性は十分にあります。
| 品目 | 目安 | ポイント |
|---|---|---|
| ナプキン | ふだんの2周期分 | 普通用・多い日用・夜用をバランスよく |
| おりものシート | 多めに | 下着を替えられない時期に、清潔を保ちやすい |
| 使い捨てショーツ | 3〜5枚 | 洗濯できない状況で重宝します |
| ウェットティッシュ(デリケート用) | 1〜2パック | 断水中の清潔ケアに |
| 黒いポリ袋・防臭袋 | 多めに | 使用済みの物を人目に触れず捨てられます |
| 鎮痛剤 | 1箱 | ふだん使っている物を。避難所では手に入りません |
「多めに買って使ったら足す」が続くコツ
生理用品は使用期限が長く、ふだん必ず使う物です。ローリングストックと同じ考え方で、いつもより1〜2パック多く買っておき、使った分を買い足すだけで備蓄になります。特別な買い物をしなくてよいのが利点です。
ナプキンは、緊急時には携帯トイレの吸水材の代わりや、けがの応急処置で当てる材料としても使えます。持ち出し袋にも数枚入れておくと安心です。
避難所で困りやすいこと
避難所は多くの人が共同で過ごす場所です。プライバシーの確保が難しく、女性が困る場面が集中します。
着替えと洗濯
- 更衣スペースが用意されるまで数日かかることがあります。大判のバスタオル・巻きタオルがあると、その場でしのげます
- 洗濯ができない前提で、下着は多めに。使い捨てショーツも有効です
- 干す場所も人目につきます。速乾性の下着と、目隠しになるタオルを
トイレ
- 共用トイレは行列になり、行くのをためらいがちです。しかし水分を控えるのは絶対に避けてください。脱水・膀胱炎・エコノミークラス症候群のリスクが上がります
- 携帯トイレを自分の分だけでも持っていると、いざというときに選択肢が増えます
- サニタリー用の防臭袋を数枚、ポーチに入れておく
夜間の安全
避難所・被災地での性犯罪や盗難は実際に起きています
言いにくいことですが、過去の災害で被害の報告があります。過度に不安になる必要はありませんが、次の自衛策は知っておいてください。
- 夜間のトイレは1人で行かない。家族や信頼できる人と一緒に
- 寝る場所は出入口や通路のそばを避け、家族連れの近くを選ぶ
- 防犯ブザー・ホイッスルを身につける。音が出る物は強い抑止力になります
- 貴重品は肌身離さず(首から下げるポーチが便利)
- 子どもから目を離さない。子どもも被害の対象になり得ます
- 困ったことがあれば、避難所の運営スタッフや女性の相談窓口へ。多くの被災地で相談窓口が設置されます
女性や子どもだけの世帯は、在宅避難や親戚宅への分散避難も選択肢として持っておくと、無理に避難所にとどまらずに済みます。
妊娠中の備え
妊娠中は、身動きが取りにくく、体調の変化も大きい時期です。備えを一段厚くしておきましょう。
- 母子健康手帳と診察券は常に持ち歩く。スマホでの撮影とコピーの両方を
- かかりつけ産院の連絡先と、被災時にどこへ行けばよいかを事前に確認しておく
- 持ち出し袋を軽くする。重い荷物は避けたいので、家族と分担を決めておく
- 清潔な下着・ナプキン(出血に備えて)、腹帯、羽織るもの
- 栄養補助食品、常温で飲める水。つわりの時期は食べられる物が限られます
- 避難のときはお腹をかばえるよう両手を空ける。リュックが基本です
- 自治体によっては、妊産婦が福祉避難所の対象になることがあります。事前に確認を
授乳中・乳児がいる場合
詳しくは赤ちゃん・子どもの防災で解説していますが、母親側の視点で押さえておきたい点を挙げます。
- 液体ミルクを備えておく。お湯も水も不要で、ストレスや疲労で母乳が出にくくなったときの保険になります
- 授乳ケープか、代わりになる大判のストール。避難所では人目が気になります
- 使い捨て哺乳びん、または紙コップ(少しずつ飲ませる方法があります)
- 災害時は環境の変化で一時的に母乳が出にくくなることがあります。自分を責める必要はありません。水分と休息を優先してください
- 避難所に授乳スペースがない場合は、運営スタッフに相談する。要望を伝えることで改善されることがあります
一人暮らし・女性だけの世帯の備え
助けを呼べる人がそばにいない状況では、備えの優先順位が変わります。「けがをしない」ことが、他の何よりも先に来ます。
まず家具の固定、それも寝室から
一人暮らしで家具の下敷きになると、発見されるまでに時間がかかります。地震のけがの多くは家具の転倒・落下によるもので、これは事前に防げます。
- 寝ている場所に倒れてくる物をなくす。背の高い家具の向きを変えるだけでも効果があります
- 賃貸で壁に穴を開けられない場合は、突っ張り棒と滑り止めマットの併用、粘着マット、家具転倒防止プレートなどが使えます(賃貸でもできる地震対策)
- ベッドや布団のそばに、靴とライトとホイッスルを置く。ガラスが散乱した床を歩けるようにするためです
- ホイッスルは、閉じ込められたときに体力を使わず居場所を知らせるための道具です。声を出し続けるのは長く持ちません
被災後の防犯
被災地では、留守宅への侵入や、支援を装った訪問が報告されています
混乱に乗じた空き巣、修理業者を名乗る訪問、義援金をかたる勧誘などが、過去の被災地で問題になっています。とくに「一人で住んでいる」と分かる状況を作らないことが自衛になります。
- 玄関先で「一人暮らしです」と答えない。不用意な訪問への対応は、ドアを開けずに行う
- 修理や点検を名乗る訪問には、その場で契約しない。自治体や管理会社に確認してから
- 避難所や仮住まいでも、部屋番号や一人暮らしであることを不特定多数に伝えない
- SNSに今いる場所をリアルタイムで投稿しない。安否を知らせるなら災害用伝言板や個別の連絡で
頼れる先を平時に作っておく
一人暮らしの最大の弱点は、異変に気づいてもらえないことです。道具ではなく関係が備えになります。
- 離れて住む家族と、安否確認の方法を決めておく(171の使い方)
- マンションなら管理人や隣室の方と、あいさつを交わす関係を作っておく(ご近所付き合いという防災)
- 自治体の避難行動要支援者名簿は、高齢者や障害のある方だけでなく、条件に当てはまれば登録できる場合があります。窓口で確認を
介護・ダブルケアを担っているとき
家庭内で介護や育児を主に担っている人は、災害時に「自分以外の人を連れて逃げる」役割を負うことになります。負担が一人に集中しないよう、平時の設計が重要です。
- 誰が誰を担当するかを、家族で文字にしておく。当日その場で決めようとすると混乱します
- 避難にかかる時間を実際に計ってみる。想定の倍かかることが分かるはずです
- 介護用品(おむつ・とろみ剤・栄養剤など)は1週間分以上を備蓄。避難所には届きにくい物資です
- お薬手帳のコピーとかかりつけ医の連絡先を、複数の場所に置く
- ケアマネジャーや地域包括支援センターに、災害時の対応を相談しておく
- 自分が倒れたときに代われる人を決めておく。これが最も見落とされます
高齢の家族がいる場合の具体策は高齢者がいる家庭の防災、乳幼児がいる場合は赤ちゃん・子どもの防災で詳しく解説しています。
避難所の運営に女性の視点を入れる
この記事で挙げてきた困りごとの多くは、避難所を運営する側に女性がいれば、そもそも起きにくくなるものです。着替える場所、干す場所、トイレの配置、生理用品の配り方——どれも、当事者でなければ気づきにくい点です。
- 物資の配布で、生理用品を人前で受け取らずに済む方法(自由に取れる場所に置く、女性スタッフが渡す)が配慮されているか
- 更衣室・授乳スペース・女性用トイレが、安全な位置にあるか
- 洗濯物を干す場所に、目隠しがあるか
- 相談窓口があり、誰に言えばよいかが掲示されているか
「言っていい」と知っておくことが備えになります
避難所では、多くの人が「みんな大変なのだから、自分だけ言うのは申し訳ない」と感じます。しかし、困りごとは伝えられて初めて改善されます。そして多くの場合、同じことで困っている人が他にもいます。運営スタッフ、自治体の職員、女性の相談窓口——伝える先はあります。声を上げることは、わがままではありません。
地域の防災訓練や自主防災組織に女性が参加することも、実効性のある備えになります。ご近所付き合いが最強の防災グッズのコラムもあわせてご覧ください。
見落とされがちな「衛生と身だしなみ」
「災害時にそんな余裕はない」と思われがちですが、清潔を保つことは感染症予防と気持ちの安定に直結します。
- ドライシャンプー:お風呂に入れない日が続くときの必需品
- 体拭き用の大判ウェットシート:断水中の清潔ケアに
- 保湿クリーム・リップ:避難所は乾燥します
- メイク落としシート:洗顔できないときに
- ヘアゴム・大きめのマスク・帽子:髪を洗えない日でも人前に出やすくなります
- 使い慣れた日焼け止め(屋外での片付け作業に)
これらは「ぜいたく品」ではありません。長引く避難生活で心を保つための、実用的な備えです。
女性の防災用品チェックリスト
基本の持ち出し袋に、次を追加してください。
- 生理用品(ナプキン・おりものシート)
- 使い捨てショーツ、替えの下着
- 防臭袋・黒いポリ袋
- 鎮痛剤、常用薬
- 防犯ブザーまたはホイッスル
- 大判のバスタオル・巻きタオル(目隠し兼用)
- ドライシャンプー、体拭きシート
- 保湿クリーム、リップ
- 母子健康手帳とお薬手帳のコピー(該当する方)
- 携帯トイレ(自分の分)
女性の防災Q&A
Q. 家族に男性しかいない場合、何を用意しておくべきですか?
A. 女性の来客や、避難所で困っている人に渡せるよう、生理用品を少し備えておくと役立ちます。また、防災の話し合いの場で「女性が困ること」を議題に入れておくと、家庭全体の備えの抜けが減ります。
Q. 避難所に行くのが不安です。行かない選択はありますか?
A. あります。自宅が安全なら在宅避難が基本ですし、親戚・友人宅やホテルへの分散避難も立派な選択です。ただし在宅避難でも、最寄りの避難所に「在宅避難している」ことを伝えておくと、物資と情報を受け取れます。
Q. 一人暮らしの女性です。特に気をつけることは?
A. 家具の固定を最優先にしてください。助けを呼べない状況で挟まれるのが最大のリスクです。そのうえで、防犯面では「被災後に在宅していることを不用意に知られない」配慮も必要になります。詳しくは一人暮らしの防災のコラムをご覧ください。
Q. 生理用品はどのくらい保存できますか?
A. 未開封であれば長期間使えますが、湿気を避けた場所での保管が前提です。ローリングストックで自然に入れ替わるようにしておけば、劣化を気にする必要がなくなります。