お金と書類
親の年金と遺族年金 ― 確認・手続き・受け取れるお金
年金は「毎月入ってくるもの」と思われがちですが、実際は2か月に1回の後払いです。この仕組みを知らないと、亡くなったあとの手続きでつまずきます。確認の仕方から遺族が受け取れるお金まで整理しました。
まず知っておきたい年金の仕組み
親の介護や、もしものときのお金を考えるとき、土台になるのが年金です。ところが「毎月いくら入っているか」を子が把握していない家庭は少なくありません。まず、つまずきやすい2つの仕組みから確認します。
① 年金は2か月に1回の「後払い」
年金は偶数月(2・4・6・8・10・12月)の15日に、その前2か月分がまとめて振り込まれます。たとえば6月15日に入るのは、4月分と5月分です。15日が土日祝のときは前の平日になります。
後払いなので、亡くなった時点では必ず「まだ受け取っていない分」が残ります。これが後で出てくる未支給年金です。
② 「額面」と「手取り」は違う
年金からは、介護保険料・後期高齢者医療保険料(または国民健康保険料)・住民税・所得税が天引きされます。年金額が月15万円でも、実際の振込額が13万円台ということはよくあります。
介護の費用を試算するときは、必ず実際の振込額(手取り)で考えてください。額面で計算すると、毎月2万円近くずれます。
年金の種類は大きく2階建て
1階が国民年金(老齢基礎年金)で、自営業・専業主婦(主夫)を含むすべての人が対象です。2階が厚生年金(老齢厚生年金)で、会社員・公務員として働いた期間がある人に上乗せされます。親が会社勤めをしていた期間があるかどうかで、遺族が受け取れるお金が大きく変わります。
親の年金額を確認する4つの方法
「いくらもらっているか」を無理に聞き出す必要はありません。親の手元に届く郵便物を一緒に見るだけで、必要な情報はそろいます。
| 確認する書類 | 届く時期 | わかること |
|---|---|---|
| 年金振込通知書 | 毎年6月ごろ | 実際の振込額、天引きされている保険料や税金の内訳。いちばん実態に近い |
| 公的年金等の源泉徴収票 | 毎年1月ごろ | 1年間の年金の総額と源泉徴収税額。確定申告にも使う |
| ねんきん定期便 | 毎年誕生月 | 加入記録と見込額(受給前の人向けの内容が中心) |
| 年金証書 | 受給開始時に一度 | 基礎年金番号、年金の種類。保管場所を確認しておく |
親が元気なうちに聞いておきたい5つ
亡くなったあとの年金手続き(期限に注意)
亡くなったあとの年金手続きは、止める手続きと受け取る手続きの2つに分かれます。まず止める手続きから見ていきます。
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年金受給権者死亡届を出す(厚生年金は10日以内・国民年金は14日以内)
日本年金機構にマイナンバーが収録されている人は、この届出は原則不要です(住民票の情報と連動するため)。ただし収録状況によっては必要になるので、心配なときは年金事務所に電話で確認してください。
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振り込まれすぎた分は返す必要がある
年金は死亡した月の分まで受け取れます。手続きが遅れて翌月以降の分まで振り込まれた場合は、後日返納の通知が届きます。慌てて口座を解約すると返納の手続きが面倒になるので、年金の精算が終わるまで口座はそのままにしておくのが無難です。
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未支給年金を請求する(次の章)
逆に、まだ受け取っていない分は遺族が請求できます。死亡届と同時に手続きするのが一般的です。
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企業年金・厚生年金基金は別に連絡する
会社の企業年金は、日本年金機構とはまったく別の手続きです。企業年金連合会や、勤めていた会社の基金に個別に連絡が必要で、ここを忘れて受け取り損ねる家庭がとても多い部分です。
加給年金・振替加算が止まることに注意
夫(または妻)の年金に、配偶者の分として上乗せされていた加給年金は、本人が亡くなると止まります。残された配偶者の年金額が想定より少なくなることがあるので、遺族年金と合わせて生活費を組み直してください。
未支給年金 ― ほぼ必ず発生する「最後の年金」
年金は後払いなので、亡くなったときには必ず未払い分が残ります。これを未支給年金といい、生計を同じくしていた遺族が請求して受け取れます。請求しなければ支払われません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 受け取れる範囲 | 亡くなった月の分まで。通常は1〜2か月分(タイミングによっては3か月分になることも) |
| 請求できる人 | 亡くなった人と生計を同じくしていた遺族。優先順位は①配偶者 ②子 ③父母 ④孫 ⑤祖父母 ⑥兄弟姉妹 ⑦それ以外の3親等内の親族 |
| 時効 | 5年。ただし他の手続きと一緒に早めに済ませるのが確実 |
| 税金の扱い | 受け取った人の一時所得。相続財産ではありません |
相続放棄をしても未支給年金は受け取れる
未支給年金は「相続財産」ではなく、請求した遺族が自分の権利として受け取るお金です。そのため、借金が多くて相続放棄をした場合でも受け取れます。ただし判断に迷うケースもあるため、相続放棄を考えている場合は先に弁護士・司法書士に確認してください。→ 遺言と相続
※ 「生計を同じくしていた」とは、同居していた場合のほか、別居でも仕送りをしていた・健康保険の扶養に入れていたなどの事情があれば認められることがあります。判断は日本年金機構が行うため、別居していた場合は年金事務所に事前相談を。
遺族年金 ― もらえる人・もらえない人
遺族年金には2種類あります。高齢の親が亡くなったケースでは、遺族基礎年金は対象外になることがほとんどで、実際に関係してくるのは遺族厚生年金です。ここを取り違えると期待外れになるので、先に整理します。
遺族基礎年金(国民年金から)
対象は18歳到達年度末までの子がいる配偶者、またはその子です(障害等級1・2級の子は20歳未満)。子が独立している高齢夫婦の場合、該当しません。
遺族厚生年金(厚生年金から)
亡くなった人に会社員・公務員だった期間があれば対象になり得ます。金額の目安は、その人の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3です。子の有無は問いません。
遺族厚生年金を受けられる人の順位
| 順位 | 対象 | おもな条件 |
|---|---|---|
| 1 | 配偶者・子 | 妻は年齢を問いません。夫は55歳以上(支給の開始は原則60歳から)。妻が30歳未満で子がいない場合は5年間の有期給付 |
| 2 | 父母 | 55歳以上(支給は60歳から) |
| 3 | 孫 | 18歳到達年度末まで など |
| 4 | 祖父母 | 55歳以上(支給は60歳から) |
知っておきたい2つの調整ルール
中高齢寡婦加算…夫が亡くなったとき40歳以上65歳未満で子のない妻などに、65歳まで一定額が加算される仕組みがあります。
65歳以降の併給調整…自分の老齢厚生年金がある人は、まず自分の年金を受け取り、遺族厚生年金はその差額分だけになります。「両方まるごともらえる」わけではない点に注意してください。
※ 遺族年金は要件が細かく、亡くなった人の加入期間や保険料の納付状況によっても変わります。上記は代表的なケースの整理です。実際に受け取れるかどうかは、必ず年金事務所で確認してください。
そのほかに受け取れる可能性のあるお金
遺族厚生年金の対象にならない場合でも、国民年金から受け取れる給付があります。どちらも自分で請求しなければ支給されません。
| 名称 | どんな制度か | おもな条件 |
|---|---|---|
| 寡婦年金 | 亡くなった夫の国民年金保険料の納付実績をもとに、妻が60歳から65歳になるまで受け取れる年金 | 夫が国民年金の第1号被保険者として一定期間保険料を納め、老齢基礎年金などを受け取らないまま亡くなったこと。婚姻期間10年以上 など |
| 死亡一時金 | 納めた保険料が掛け捨てにならないよう、遺族に一度だけ支払われる一時金 | 第1号被保険者として一定期間保険料を納め、年金を受け取らないまま亡くなったこと。生計を同じくしていた遺族が請求 |
| 葬祭費・埋葬料 | 健康保険から葬儀を行った人に支給されるお金 | 加入していた健康保険により金額と窓口が異なります。→ 葬儀の準備と費用 |
寡婦年金と死亡一時金は「どちらか一方」
両方の条件を満たす場合でも、受け取れるのはどちらか片方だけです。受け取れる総額が変わるため、年金事務所で両方の金額を試算してもらってから選んでください。
手続きの窓口と持ち物
| 手続きの内容 | 窓口 |
|---|---|
| 厚生年金に関すること(遺族厚生年金・未支給年金など) | 年金事務所、街角の年金相談センター |
| 国民年金だけの人(遺族基礎年金・寡婦年金・死亡一時金) | お住まいの市区町村の国民年金担当窓口 |
| 企業年金・厚生年金基金 | 企業年金連合会、または勤めていた会社の基金 |
| 共済(公務員・私学教職員だった場合) | 各共済組合 |
持っていくもの(代表的なもの)
予約してから行くと1回で終わります
年金事務所は電話や「ねんきんダイヤル」で相談予約ができます。予約なしで行くと長時間待ったうえ、書類不足で出直しになることも。予約のときに「何を持っていけばよいか」を聞いておくと、1回で手続きが終わります。→ 相談先ガイド
※ 本ページの内容は2026年8月時点の一般的な整理です。年金の制度は改正されることがあり、個別の条件で結論が変わります。実際の手続きは日本年金機構(ねんきんダイヤル・年金事務所)で必ずご確認ください。
よくある質問
親の年金がいくらか、本人に聞かずに知る方法はありますか?
毎年6月ごろに届く年金振込通知書を一緒に見るのがいちばん確実です。実際の振込額と、天引きされている保険料・税金の内訳がすべて載っています。本人の同意なく年金事務所が第三者に金額を教えることはできないため、「入院したときに困らないように」と伝えて、書類を一緒に確認するのが現実的な方法です。
親が亡くなりました。年金の手続きはいつまでにすればよいですか?
年金を止める届出は、厚生年金は死亡から10日以内、国民年金は14日以内が原則です。ただし日本年金機構にマイナンバーが収録されていれば届出そのものが不要なケースが増えています。一方、未支給年金や遺族年金の請求は時効が5年ですが、他の手続きと一緒に早めに済ませるのが確実です。
未支給年金は相続財産になりますか? 相続放棄したら受け取れませんか?
未支給年金は相続財産ではなく、請求した遺族が自分の権利として受け取るお金です。したがって相続放棄をしても受け取れます。税金の扱いも相続税ではなく、受け取った人の一時所得になります。ただし個別の事情で判断が分かれることもあるため、相続放棄を検討している場合は弁護士や司法書士に確認してください。
母は専業主婦でした。父が亡くなったら遺族年金はもらえますか?
父に会社員や公務員としての勤務期間があれば、遺族厚生年金の対象になる可能性があります。金額の目安は父の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3です。父が自営業などで国民年金だけの場合、子が独立していれば遺族基礎年金は対象外となり、寡婦年金や死亡一時金の検討になります。加入歴によって結論が変わるので、年金事務所で試算してもらってください。