01

救急のとき、まず何をするか

親の「もしも」で実際に最も多いのは、死ではなく急な入院です。連絡を受けた直後は動転しますが、やることは決まっています。

  1. 病院名・病棟・担当医を控える

    電話口で必ずメモします。あとで何度も確認することになります。

  2. 保険証・お薬手帳・診察券を探して持参する

    これがあるだけで手続きが一気に進みます。日頃から保管場所を共有しておくことが、いちばんの備えです。→ 重要書類の整理

  3. かかりつけ医・持病・薬を医師に伝える

    治療方針を左右する重要情報です。わからない場合は、お薬手帳の写真を見せるだけでも大きく役立ちます。

  4. きょうだい・親族に一報を入れる

    あとから「聞いていない」というしこりを残さないために、状況が落ち着いた段階で共有します。

  5. 実家の火元・戸締まり・ペットを確認する

    意外と忘れがちです。冷蔵庫の生鮮品、暖房、郵便物の対応も含めて確認しておきましょう。

「緊急時カード」があれば全部そろう

かかりつけ医・持病・薬・保険証の場所・連絡先を1枚にまとめて冷蔵庫に貼っておく方法です。救急隊も確認する定番の置き場所で、多くの自治体が「救急医療情報キット」として同じ仕組みを配布しています。→ 緊急時カードの作り方

02

入院の持ち物リスト

あらかじめ1つの袋にまとめておくと、いざというとき持ち出すだけで済みます。最近は病衣やタオルをレンタルできる病院も多いので、まず病院の案内を確認してください。

手続きに必要なもの

身の回りのもの

忘れやすいけれど大事なもの

高価なもの・大金は持ち込まない

入院中の貴重品管理はトラブルのもとです。指輪や高額な現金は自宅に置き、必要な分だけを持たせてください。

03

医療費の上限を下げる高額療養費制度

入院と聞くと費用が心配になりますが、公的医療保険には1か月の自己負担に上限を設ける仕組みがあります。これが高額療養費制度です。上限額は年齢と所得によって決まり、超えた分はあとから払い戻されます。

「あとから返る」より「最初から払わない」ほうが楽

払い戻しを待つと、いったん高額を立て替える必要があります。そこで使うのが次の2つです。どちらかを用意すれば、窓口での支払いが最初から上限額までで済みます

方法手続きポイント
マイナ保険証を使う 受付でマイナ保険証を読み取り、限度額情報の提供に同意する 事前申請が不要。いちばん手軽。急な入院でも対応しやすい
限度額適用認定証 加入している健康保険(市区町村の国保窓口、協会けんぽ、健康保険組合など)に申請して交付を受け、病院に提示 マイナ保険証を使わない場合はこちら。入院が決まったら早めに申請

入院が決まったら、まず病院の窓口で相談を

「医療費が高額になりそうで心配です」と受付や医事課に伝えれば、その病院での手続き方法を教えてもらえます。遠慮する必要はまったくありません。制度を知らずに満額を払ってしまう人が多いので、聞くだけで数万円単位の差が出ることがあります。

あわせて知っておきたい制度

上限の対象にならない費用もある

差額ベッド代(個室料)、食事代の一部、パジャマ代、先進医療の費用などは高額療養費の対象外です。特に差額ベッド代は日額が大きく、長期入院では負担が膨らみます。希望していない個室に移る場合、原則として差額ベッド代の支払い義務はありません。同意書にサインする前に、内容と金額を必ず確認してください。

※ 自己負担限度額の区分や制度の詳細は改正されることがあります。最新の内容は加入している健康保険や市区町村の窓口でご確認ください。

04

退院支援 ― 早めに相談室へ

入院で家族が最も慌てるのは、「来週退院です」と急に言われたときです。自宅で受け入れる準備も、施設を探す時間もない——これを避けるために、入院したら早い段階で相談しておくべき窓口があります。

病院の「医療相談室」「地域連携室」を使う

多くの病院に、医療ソーシャルワーカー(MSW)や看護師が在籍する相談窓口があります。相談は無料で、退院後の生活、介護サービスの導入、転院や施設の紹介、医療費の心配まで幅広く相談できます。「退院後が不安なので相談したい」と病棟の看護師に伝えれば、つないでもらえます。

退院前に決めておく3つのこと

  1. どこへ帰るか

    自宅か、リハビリのため老健などへ移るか、施設を探すか。体の状態と自宅の環境(段差・階段・トイレ)を照らして判断します。→ 家の危険チェック老人ホームの選び方

  2. 誰がどう支えるか

    家族の役割分担と、使う介護サービスを決めます。要介護認定を受けていない場合は入院中に申請を進めるのが鉄則です。退院してから申請すると、サービスが使えない空白期間ができます。→ 介護のはじめ方

  3. 何を準備するか

    介護ベッドや手すりのレンタル、住宅改修、通院の足の確保。退院前にケアマネジャーと打ち合わせておけば、帰宅初日から生活が回ります。

「退院前カンファレンス」に参加する

退院前に、医師・看護師・リハビリ職・ケアマネジャー・家族が集まって方針を共有する話し合いの場を設けてもらえることがあります。家族が疑問をぶつけられる貴重な機会なので、案内があればぜひ参加してください。案内がなくても「開いてもらえますか」と相談して構いません。

05

入院をきっかけに介護が始まるとき

高齢者の入院は、たとえ治療がうまくいっても体力や生活能力が落ちて退院することが少なくありません。「入院前は一人で暮らせていたのに、退院したら別人のようだった」というのはよくある話です。これを前提に動くと、慌てずに済みます。

認定を待つ間もサービスは使えることがある

要介護認定の結果が出るまでは通常30日程度かかりますが、申請日にさかのぼって適用されるため、認定前でも暫定のケアプランでサービスを使い始められる場合があります。「結果を待たないと何もできない」と諦めず、ケアマネジャーに相談してください。

06

仕事をしながら付き添うコツ

付き添いは体力と時間を消耗します。がんばりすぎると、退院後の長い介護生活が始まる前に息切れしてしまいます。

  1. 毎日行かなくていい

    治療は病院が担っています。家族の役割は、医師の説明を聞き、必要な判断をし、本人の気持ちを支えること。面会は回数より大事な日に確実に行くほうが効果的です。

  2. 医師の説明は複数人で聞く・記録する

    説明は専門用語が多く、一人では覚えきれません。可能ならきょうだいと一緒に、難しければメモを取り、その場で「つまり◯◯ということですか」と確認します。

  3. 連絡窓口を家族内で一本化する

    病院からの連絡先を1人に決め、その人からきょうだいに共有する形にすると、情報の行き違いを防げます。

  4. 勤務先の制度を早めに確認する

    介護休暇は時間単位で取得できるため、通院の付き添いにも使えます。「まだ介護ではないから」と遠慮せず、使える制度は把握しておきましょう。

自分の体調を後回しにしない

付き添いが続くと、家族のほうが先に倒れることがあります。睡眠と食事だけは死守してください。つらいと感じたら、それは甘えではなく限界のサインです。→ 介護疲れと共倒れ防止

07

よくある質問

限度額適用認定証は入院前に用意しないと間に合いませんか?

マイナ保険証を使えば事前手続きなしで限度額が適用されるため、急な入院でも対応できます。認定証を使う場合も、月内に間に合えばその月の支払いに適用できることが多く、間に合わなくてもあとから高額療養費として払い戻しを申請できますので、払い損になることはありません。まずは病院の窓口に相談してください。

差額ベッド代(個室料)は断れますか?

治療上の必要があって病院側の判断で個室になった場合や、空きがなくやむを得ず個室になった場合は、原則として差額ベッド代を求められません。請求されるのは、患者・家族が同意書にサインして希望した場合です。金額と条件を確認せずにサインしないよう注意してください。納得できない請求は、病院の相談室や加入する健康保険に相談できます。

退院を急かされている気がします。どうすれば?

入院期間には医療制度上の目安があるため、病状が落ち着くと退院の話が出るのは自然なことです。ただし「行き先が決まっていないのに退院」は避けるべきです。医療相談室に「退院後の生活の準備ができていない」と率直に伝えてください。転院先や施設、在宅サービスの調整を一緒に考えてくれます。相談が早いほど選択肢が広がります。

入院費用は親のお金から払っていいですか?

親の医療費は親自身のお金から支払うのが原則です。子が立て替えた場合は、領収書とメモを必ず残してください。のちの相続で「使い込んだ」と疑われるのを防げます。親の判断能力が低下して口座からお金を動かせない事態に備える方法は、認知症とお金で解説しています。