実家と暮らし
親を狙う詐欺の対策 ― 手口・防ぎ方・相談先
「うちの親は大丈夫」といちばん思われている家庭ほど被害に遭います。だまされるのは判断力の問題ではなく、手口が巧妙だからです。知っておくだけで防げる型を整理しました。
なぜ高齢の親が狙われるのか
年齢のせいではありません。犯人側から見て「条件がそろっている」から狙われます。理由がわかると、対策のポイントも見えてきます。
| 狙われる条件 | 犯人側の理屈 |
|---|---|
| 日中、家に一人でいる | 相談される前に決めさせられる。訪問しても止める人がいない |
| 固定電話に必ず出る | 連絡が取りやすく、名乗りを信じてもらいやすい |
| まとまった預貯金がある | 被害額を大きくできる |
| 断るのが苦手・礼儀正しい | 「話だけでも」と言えば、そのまま最後まで聞いてもらえる |
| 家族に心配をかけたくない | 被害に気づいても相談されにくく、発覚が遅れる |
| 過去に契約したことがある | 名簿が出回り、繰り返し狙われる(次々販売) |
いちばんの弱点は「家族に言えない」こと
被害が大きくなるのは、最初の一件で相談できなかったときです。「叱られる」「情けない」と思わせないことが、実は最大の防御になります。ふだんから「変な電話きたら教えてね、うちにも来るから」と、責めない形で話題にしておいてください。
電話から来る手口(特殊詐欺)
| 手口 | 典型的な流れ | 見破るポイント |
|---|---|---|
| オレオレ詐欺 | 息子や孫をかたり「風邪で声が変わった」「携帯をなくして番号が変わった」→ 会社のお金を使い込んだ、示談金が必要と続く | 番号が変わったという連絡が来たら、必ず元の番号にかけ直す |
| 還付金詐欺 | 市役所・年金事務所・健康保険を名乗り「医療費の還付金があります」→ 期限が今日までと急かし、ATMへ誘導する | ATMで還付金は受け取れません。ATMに行かせる時点で100%詐欺 |
| 預貯金詐欺・カード詐欺盗 | 警察官・銀行協会・金融庁を名乗り「あなたのカードが不正に使われている」→ 自宅に来てカードを封筒に入れさせ、すきを見てすり替える | 警察も銀行もカードを預かりに来ません。暗証番号を聞くこともありません |
| 架空料金請求 | 「有料サイトの未納料金があります。今日中に払わなければ裁判に」→ コンビニで電子マネーを買わせる | 支払いを電子マネーやギフトカードで求めるのは詐欺の典型 |
| 金融商品・未公開株 | 「あなたにだけ買う権利がある」「代わりに買ってくれたら高く買い取る」と複数の業者が役割分担して信じ込ませる | 「あなただけ」「必ず儲かる」は勧誘の禁止事項。その場で断ってよい |
この2つだけ覚えてもらえば、大半が防げます
① ATMでお金は戻ってこない(還付金の手続きはATMではできません)
② キャッシュカードと暗証番号は、誰が来ても渡さない・言わない
難しい手口を全部覚える必要はありません。この2点を紙に書いて、電話機のそばに貼っておくのが実は最も効果的です。
訪問してくる手口
| 手口 | 入り口の言葉 | 問題点 |
|---|---|---|
| 点検商法 | 「無料で点検します」「近所で工事をしているので挨拶に」(屋根・床下・給湯器・水道・消火器) | 点検後に「このままでは危険」と不安をあおり、高額な工事契約に持ち込む |
| リフォーム勧誘 | 「今なら補助金が出ます」「モニター価格で」 | 相場より大幅に高い契約。次々と追加工事を勧められる |
| 訪問購入(押し買い) | 「使わない着物や食器を買い取ります」 | 家に上がったあと貴金属を出させ、安値で買い取る。訪問購入もクーリング・オフの対象 |
| 次々販売 | 一度契約した人に繰り返し訪問 | 判断力や断る力が弱い人を狙い、支払能力を超える契約を重ねる |
| 送りつけ商法 | 注文していない商品が届く | 2021年7月から、届いた商品は直ちに処分してよく、代金を支払う必要もありません |
玄関で使える断り方
理屈で言い返す必要はありません。次の3つを、そのまま使ってください。
- 「家族に相談してからでないと決められません」(いちばん有効。決定権がないと伝わると引き下がります)
- 「うちは結構です」とだけ言ってドアを閉める(理由を説明すると話が続きます)
- チェーンをかけたまま応対し、家に上げない
スマホ・パソコンから来る新しい手口
ここ数年で急増しているのがこの分野です。「うちの親はネットをやらないから」と思っていても、スマホを持っていれば対象になります。
| 手口 | 内容 | 対処 |
|---|---|---|
| サポート詐欺 | パソコンやスマホに突然「ウイルスに感染しました」という警告画面と警告音が出て、表示された番号に電話させる。遠隔操作ソフトを入れさせ、電子マネーやコンビニ払いで料金を請求する | 警告画面は偽物。電話せず、ブラウザを閉じる(閉じられなければ電源を切って再起動) |
| SNS型投資詐欺 | 著名人の名前や写真を使った広告から、メッセージアプリのグループへ誘導。少額の利益を出して信用させ、大金を入金させる | 「有名人が個別に投資を教える」ことはありません。出金できなくなった時点で被害 |
| ロマンス詐欺 | SNSで親密になり、投資や送金を持ちかける。相手に会うことは決してない | 会ったことのない相手にお金を送らない、を家族の約束にする |
| フィッシング | 宅配便の不在通知、銀行、通信会社を装うメールやSMSから偽サイトへ誘導し、IDやカード番号を入力させる | メールやSMSのリンクからは開かず、公式アプリか、自分でブックマークしたページから確認する |
合言葉は「電子マネーで払わせるのは詐欺」
コンビニでプリペイドカードやギフトカードを買わせ、番号を伝えさせる——この形が出てきたら、名目が何であれ詐欺です。正規の企業や役所が、支払いをこの方法で求めることはありません。
家庭でできる7つの対策
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固定電話を常時留守番電話にする
犯人は録音を嫌います。これだけで電話の詐欺は大きく減ります。迷惑電話防止機器(警告メッセージを流し、通話を録音する装置)は、購入費用を補助している自治体が多くあります。市区町村の消費生活センターや高齢者福祉の窓口に問い合わせてみてください。
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家族の「合言葉」と、かけ直しのルールを決める
「番号が変わった」という連絡が来ても、必ず元の番号にかけ直す。これを家族の約束にします。合言葉は本人しか知らない具体的な内容(飼っていた犬の名前など)にします。
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カードと暗証番号は誰にも渡さない
警察官・銀行員・役所の職員を名乗る人が来ても同じです。本物の職員がカードを預かることはありません。
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ATMでは携帯電話を使わない
電話で指示を受けながらATMを操作しているのは、還付金詐欺の典型的な光景です。家族間でこのルールを共有しておきます。
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玄関で即決しない
「家族に相談してから」と言って、その場では絶対に契約しない。訪問販売お断りのステッカーを貼るのも効果があります。
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お金の流れが見える形をつくる
日常使いの口座と、まとまった預金の口座を分けておく。可能であれば通帳の記帳を一緒に確認する習慣をつくります。判断力の低下が心配な段階なら、日常生活自立支援事業や成年後見制度の検討も。→ 認知症とお金
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「断ってよい」と伝えておく
まじめな方ほど、話を最後まで聞いてしまいます。「いりません、と言って切っていい」「失礼にならない」と、家族から言葉にして伝えておくことが効きます。
契約してしまったら(クーリング・オフ)
いったん契約しても、一定期間内なら無条件で解除できます。「もう払ってしまった」とあきらめる前に、日数を確認してください。
| 取引の種類 | 期間 |
|---|---|
| 訪問販売、電話勧誘販売、特定継続的役務提供(エステ・学習塾など)、訪問購入 | 8日間 |
| 連鎖販売取引(マルチ商法)、業務提供誘引販売取引(内職商法など) | 20日間 |
| 通信販売(ネット通販など) | クーリング・オフ制度はありません(各社の返品特約によります) |
手続きのしかた
期間が過ぎていても、あきらめないでください
書面が渡されていない、記載に不備がある、うそをつかれた(不実告知)、帰ってほしいと言ったのに居座られた——こうした事情があれば、8日を過ぎても解除できる場合があります。まずは消費生活センターに相談してください。判断はプロに任せるのがいちばんです。
相談先一覧
| 相談先 | 番号・窓口 | こんなときに |
|---|---|---|
| 消費者ホットライン | 188(いやや) | 契約トラブル全般。最寄りの消費生活センターにつながります |
| 警察相談専用電話 | #9110(緊急時は110) | 詐欺の疑い、不審な訪問や電話。実際に被害に遭った場合 |
| 金融機関 | カード裏面のコールセンター | カードを渡した・暗証番号を教えた場合。すぐ利用停止を |
| 地域包括支援センター | 市区町村の担当窓口 | 判断力の低下が心配なとき。見守りや権利擁護の相談 |
| 法テラス | 0570-078374 | 法的トラブルの相談先案内。収入によっては無料相談も |
「お金を取り戻します」という電話は二次被害です
一度被害に遭った人の情報は名簿として出回ります。その後に「被害回復の手続きをします」「弁護士費用が必要です」という連絡が来ることがありますが、これは同じグループによる二次被害である可能性が高いです。返金の話が来たら、必ず188か警察に確認してください。
家族が最初にやること ― 責めない
「なんでそんなものに引っかかったの」と言った瞬間から、次の被害は隠されます。まず「話してくれてよかった」と言ってください。そのうえで、契約書・領収書・振込明細・相手の連絡先を保管し、日付を書き出して188に相談します。事実の記録が、その後の交渉を左右します。
※ 本ページの内容は2026年8月時点の一般的な整理です。手口は次々に変化し、制度も改正されます。実際のトラブルでは、消費者ホットライン(188)や警察相談専用電話(#9110)に必ずご相談ください。
よくある質問
親に「詐欺に気をつけて」と言っても聞いてくれません。どうすればよいですか?
「あなたが危ない」という伝え方は、本人の自尊心を刺激して逆効果になりがちです。「うちにも変な電話が来た」「知人の親が被害に遭ったらしい」と、自分や第三者の話として伝えると受け入れられやすくなります。あわせて、留守番電話を常時オンにする、迷惑電話防止機器を設置するなど、本人の意識に頼らない仕組みを先に作るのが確実です。
還付金があると電話が来ました。本物かどうか、どう見分けますか?
ATMへ行くよう言われた時点で詐欺と判断して構いません。医療費や保険料の還付金を、ATMの操作で受け取ることはできません。本物の還付は、書類が郵送され、指定した口座に振り込まれる形が基本です。「今日が期限」「携帯を持ってATMへ」という言葉が出たら、電話を切って市区町村の代表番号に自分でかけ直してください。
高額なリフォーム契約をしてしまいました。もう解約できませんか?
訪問販売による契約なら、契約書面を受け取った日から8日以内はクーリング・オフができます。工事が始まっていても解除でき、原状回復の費用を請求されることもありません。8日を過ぎていても、書面が渡されていない、記載に不備がある、うそをつかれたなどの事情があれば解除できる場合があります。まず消費者ホットライン(188)に相談してください。
パソコンに「ウイルスに感染しました」と警告が出て、電話をかけてしまいました。
その警告画面は偽物です。遠隔操作ソフトを入れてしまった場合は、すぐにインターネット接続を切り、ソフトを削除してください。電子マネーの番号を伝えてしまった場合は、購入したコンビニやカード会社に連絡し、あわせて188と警察(#9110)に相談します。クレジットカード番号を入力した場合は、カード会社に連絡して利用停止の手続きをとってください。