01

介護離職を勧めない4つの理由

親の介護のために仕事を辞める人は、毎年10万人前後にのぼるといわれます。真面目で責任感の強い人ほど選びがちですが、多くの場合、状況は良くなりません。

  1. 収入が途絶えても、介護費用は続く

    介護にかかるお金は、辞めても減りません。むしろ、介護サービスを減らして自分で担うほど本人の生活の質も、あなたの時間も失われます。親の年金と貯蓄で足りるのか、辞める前に必ず数字にしてください。→ 介護のお金と施設

  2. 介護が終わったあと、元の仕事には戻れないことが多い

    介護は数か月で終わるとは限りません。数年から10年以上続くこともあります。ブランクを経ての再就職は、条件が下がる傾向があります。

  3. 自分の老後資金と年金が減る

    働かない期間は厚生年金の加入期間が途切れ、将来自分が受け取る年金額も減ります。親の介護のために、自分の老後を削ることになりかねません。→ 老後資金の準備

  4. 逃げ場がなくなり、共倒れしやすくなる

    仕事は負担であると同時に、介護から離れられる時間でもあります。24時間の当事者になると、社会とのつながりが切れ、相談相手も減ります。介護うつのリスクが上がるのはこの状態です。→ 介護疲れと共倒れ防止

それでも「もう限界」と感じているなら

辞めるかどうかの前に、まず介護休業を取って体制を立て直すことを検討してください。辞めるのはいつでもできますが、辞めてから制度を使うことはできません。順番が大切です。

02

働きながら使える制度の一覧

育児・介護休業法によって、次の制度が法律で保障されています。会社の就業規則に書かれていなくても、法律上の権利として請求できます

制度内容使いどころ
介護休業 対象家族1人につき通算93日まで。3回まで分割して取得できる 介護の体制を組み立てる時期。次の章で詳しく
介護休暇 5日(対象家族が2人以上なら年10日)。時間単位で取得できる 通院の付き添い、認定調査の立ち会い、ケアマネジャーとの面談
所定外労働の制限 請求すれば残業を免除してもらえる デイサービスの送り出しや帰宅時間に合わせたいとき
時間外労働の制限 1か月24時間、1年150時間を超える時間外労働をさせられない 繁忙期でも上限を確保したいとき
深夜業の制限 午後10時から午前5時までの労働を制限できる 夜間の見守りが必要なとき
所定労働時間の短縮等の措置 短時間勤務・フレックスタイム・時差出勤・介護費用の助成のいずれかを会社が用意する。利用開始から3年以上の期間で2回以上使える 長期的に働き方を調整したいとき
テレワーク 介護のためのテレワーク導入が、2025年4月から事業主の努力義務 在宅勤務で見守りと両立したいとき

対象になる家族の範囲

配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫。同居や扶養は条件ではありません。離れて暮らす親も対象です。→ 遠距離介護

2025年4月から会社の義務が増えました

介護に直面したことを申し出た人への個別の周知と意向確認、40歳前後の早い段階での情報提供、研修や相談窓口の整備などが事業主に義務づけられました。「制度を知らなかった」という状態を減らすための改正です。会社から案内がない場合も、自分から人事に確認して構いません。

03

介護休業93日の正しい使い方

介護休業は「自分で介護をするための休み」ではありません

いちばん多い誤解がこれです。93日を連続で使い、自分で介護をして復帰すると、復帰後に何も変わっていない状態が待っています。介護休業は、仕事を続けられる体制をつくるための準備期間と考えてください。

3回に分けて使う設計例

タイミングその期間にやること
1回目
(2〜3週間)
介護が始まったとき 要介護認定の申請と調査の立ち会い、ケアマネジャー選び、サービスの導入、住まいの安全確認。→ 介護のはじめ方
2回目
(2〜4週間)
状態が変わったとき 施設の見学と申し込み、在宅の体制の組み直し、きょうだいとの役割分担の再調整。→ 老人ホームの選び方
3回目
(残りの日数)
看取りの時期 本人と過ごす時間、医療との調整、葬儀と手続きの準備。→ 在宅医療と人生会議

申し出のしかた

介護休業は、原則として開始予定日の2週間前までに会社へ申し出ます。「要介護認定を受けていること」は条件ではなく、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態であれば対象です。証明書類の提出を求められることがありますが、会社が独自に厳しい条件を付けることはできません。

04

介護休業給付金 ― 賃金の67%

介護休業中を無給とする会社は少なくありません。その間の収入を支えるのが、雇用保険から支給される介護休業給付金です。

項目内容
金額休業開始時の賃金日額のおおむね67%(上限額あり)
対象雇用保険の被保険者で、休業開始前の一定期間に必要な勤務実績があること
対象日数介護休業と同じく、対象家族1人につき通算93日まで(3回まで)
申請原則として会社を通じてハローワークへ。休業が終わってからまとめて申請するのが一般的
支給時期休業後の申請・審査を経てからの振り込みになるため、すぐには入りません

社会保険料は免除されません(育児休業との大きな違い)

育児休業中は健康保険料と厚生年金保険料が免除されますが、介護休業中は免除されません。無給であっても保険料の負担は続くため、給付金の67%がそのまま手取りになるわけではない点に注意してください。休業中の保険料をどう支払うか(会社に立て替えてもらうのか、振り込むのか)を、事前に人事に確認しておきましょう。

※ 支給の要件や上限額は改定されることがあります。実際の金額と手続きは、勤務先の人事担当またはハローワークにご確認ください。

05

会社への伝え方

言い出しにくい気持ちはよくわかります。ただ、隠している間に選択肢が減っていくのがこの問題の特徴です。早く伝えたほうが、結果的に働き続けやすくなります。

  1. 先に就業規則を確認する

    法定を上回る制度(介護休業を1年まで認める、休業中も一部有給、介護のための特別休暇など)を持つ会社もあります。社内の制度を知ってから相談すると話が早く進みます。

  2. 「事実・期間・希望」の3点で伝える

    感情ではなく、業務の見通しとして伝えるのがコツです。
    例:「母が要介護2の認定を受け、週2回の通院付き添いが必要になりました。今月から3か月間、火曜と木曜の残業を免除していただきたいです。業務は◯◯さんと分担できるよう調整します」

  3. 上司と人事の両方に伝える

    上司だけだと制度の詳細がわからず、人事だけだと日々の業務調整が進みません。両方に共有しておくのが確実です。

  4. 「辞めます」を最後のカードにしない

    先に退職を口にすると、会社側も引き止めの制度提案をしにくくなります。まず「続けたいので相談したい」という入り方をしてください。

制度を使わせてもらえないときの相談先

介護休業や介護休暇の取得を拒む、取得を理由に不利益な扱いをする——これらは法律で禁じられています。会社と話がつかない場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談できます。相談は無料で、匿名での問い合わせも可能です。

06

働きながら続けるための工夫

介護の側でできること

  • ケアマネジャーに最初に「働いている」と伝える。前提が変わればプランも変わります
  • 朝夕の訪問介護、日中のデイサービスで、勤務時間帯を空ける
  • 出張や繁忙期に合わせてショートステイを予約する
  • 見守り機器・センサー・自動通報の活用(遠距離なら特に)

在宅介護サービスの選び方

家族の側でできること

  • きょうだいで役割を分ける(訪問・お金・手続き・情報整理)
  • すべてを一人で抱えている状態を、まず可視化する
  • 「できないこと」を明確に言葉にして共有する
  • 親族の同意が要る場面を事前に洗い出しておく

親との話し方・家族会議

チェック:この状態なら制度を使うタイミングです

2つ以上あてはまるなら、いまが体制を立て直すタイミングです。

07

相談先

相談先相談できること
会社の人事・総務社内制度の内容、休業中の給与と社会保険料の扱い、申請の手続き
ハローワーク介護休業給付金の要件と金額、申請書類
都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)制度を使わせてもらえない、取得を理由に不利益を受けた場合
地域包括支援センター介護サービスの組み立て、働きながら介護するための地域資源
ケアマネジャー勤務時間に合わせたケアプランへの見直し

※ 本ページの内容は2026年8月時点の一般的な整理です。制度の内容や給付の要件は法改正で変わることがあります。実際の利用にあたっては、勤務先の人事担当、ハローワーク、都道府県労働局にご確認ください。→ 相談先ガイド

08

よくある質問

介護休業は93日しかありません。それで介護が終わるとは思えないのですが。

介護休業は「介護を終わらせるための休み」ではなく、仕事を続けられる体制をつくるための準備期間です。93日は3回まで分割できるので、介護が始まった時期、状態が変わった時期、看取りの時期に分けて使うのが本来の設計です。連続して使い切ってしまうと、その後に制度が残りません。分けて使うことを前提に計画してください。

介護休業中の収入はどうなりますか?

多くの会社では無給ですが、雇用保険から介護休業給付金が支給され、休業開始時の賃金のおおむね67%が受け取れます(上限あり)。ただし育児休業と違い社会保険料は免除されません。また、支給は休業後の申請・審査を経てからになるため、すぐには振り込まれません。休業中の生活費は、この時間差も見込んで準備してください。

離れて暮らす親でも、介護休業は使えますか?

使えます。介護休業の対象家族は、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫で、同居や扶養は条件になっていません。遠方の親のために休業を取り、認定申請やサービスの手配、住まいの安全確認を行うことは、制度の本来の使い方に沿っています。

会社に介護休業を申し出たら、渋られています。

介護休業や介護休暇の取得を拒むこと、取得を理由に不利益な扱いをすることは法律で禁止されています。まず就業規則を確認し、人事に法律上の権利であることを伝えてください。それでも解決しない場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談できます。相談は無料で、匿名での問い合わせも可能です。