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施設を考え始めるタイミング

施設探しでいちばん多い失敗は、「切羽詰まってから探し始めること」です。入院先から「来週退院です」と言われてから慌てて探すと、条件の合わない施設に決めざるを得なくなります。次のサインが出たら、まだ入居しなくても情報収集だけは始めておくのが正解です。

「まだ入らないけれど、2〜3件見ておく」が最強の準備

費用が抑えめな特別養護老人ホームは、地域によって待機が生じます。見学だけなら無料で、申し込みをしても入居を断ることはできます。選択肢を持っている状態を作っておくことが、いざというときの安心につながります。

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施設の種類と向いている人

「老人ホーム」と一言で言っても中身は大きく違います。まずは公的施設か民間施設かで分けて考えると整理しやすくなります。

特別養護老人ホーム、グループホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、自宅継続の特徴を比較した図
左ほど公的で費用が抑えめ、右ほど民間でサービスの幅が広い傾向があります
種類入居の目安費用の目安(月額)向いているケース
特別養護老人ホーム
(特養・公的)
原則 要介護3以上 7〜15万円
入居一時金なし
費用を抑えたい/長期の入居を前提にしたい。待機が発生することがある
介護老人保健施設
(老健・公的)
要介護1以上 8〜17万円 退院後にリハビリして在宅復帰を目指す。原則は数か月の一時的な利用
介護付き有料老人ホーム
(民間)
自立〜要介護5
※施設による
15〜30万円
一時金0〜数千万円
手厚い介護を受けたい/すぐに入居先を決めたい
住宅型有料老人ホーム
(民間)
自立〜要介護 15〜30万円 介護は外部サービスを使う。生活支援中心で自由度が高い
サービス付き高齢者向け住宅
(サ高住・賃貸)
自立〜軽度の要介護 10〜30万円
敷金15〜50万円
見守りと生活相談が付いた賃貸住宅。自立度が高いうちの住み替えに
グループホーム
(地域密着型)
要支援2以上+
認知症の診断
12〜20万円 認知症の方が少人数で家庭的に暮らす。原則その地域に住民票が必要

※ 金額は一般的な目安です。地域・居室のタイプ・要介護度によって大きく変わります。必ず個別の見積もりで確認してください。

迷ったら「介護度」と「お金」で絞る

要介護3以上で費用を抑えたいなら特養、退院後のリハビリなら老健、認知症で地域に馴染ませたいならグループホーム、すぐ確実に入りたいなら有料老人ホーム——というのが大まかな道筋です。判断に迷ったらケアマネジャーか地域包括支援センターに相談すると、地域の実情に合った候補を挙げてもらえます。

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後悔しない選び方 5つの軸

パンフレットの写真や「きれいさ」で選ぶと、あとで後悔しがちです。次の5つの軸で、家族の優先順位を先に決めておきましょう。

  1. お金 ― 年金と貯蓄で何年もつか

    いちばん大切な軸です。「月額費用 − 親の年金月額 = 毎月の持ち出し」を計算し、貯蓄で何年もつかを出します。介護は平均4〜5年、長ければ10年以上続きます。途中で払えなくなって転居するのが最もつらい結末なので、背伸びは禁物です。→ 介護のお金と施設

  2. 場所 ― 家族が「無理なく通える」か

    面会に行きやすい距離かどうかは、入居後の本人の安心に直結します。「片道1時間以内」「乗り換えなし」など、続けられる条件で考えてください。豪華でも通えない施設より、質素でも家族がよく顔を出せる施設のほうが満足度は高くなります。

  3. 医療 ― 重くなったときどこまで対応できるか

    見落としがちですが最重要の一つです。「たん吸引や胃ろうに対応できるか」「夜間に看護師がいるか」「協力病院はどこか」「看取りまで対応するか、重度化したら退去か」。ここを確認せずに入ると、数年後に再び施設探しをすることになります。

  4. 介護体制 ― 職員の人数と入れ替わり

    「入居者何人に対して職員何人か」を必ず聞きます。あわせて職員の定着率も重要です。職員がころころ変わる施設は、ケアの質が安定しません。「長く勤めている方は多いですか」と素直に聞いてみてください。

  5. 暮らし ― 本人の性格に合うか

    にぎやかなレクリエーションが好きな人もいれば、静かに過ごしたい人もいます。食事の好み、お風呂の回数、外出や飲酒・喫煙の自由度など、本人が毎日を過ごす場所として合うかどうかを考えます。

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見学チェックリスト22項目

見学はできれば2〜3か所、同じ曜日・同じ時間帯で回ると比較しやすくなります。おすすめは平日の昼前後。食事の様子と職員の動きが同時に見られます。チェックした状態はこの端末に保存されます。

入る前・入った瞬間(第一印象)

入居者と職員の様子(いちばん大事)

居室・共用部

食事・生活

医療・お金・万一のとき

案内された場所だけを見ない

見学ではきれいな場所を案内されます。可能なら「トイレをお借りできますか」と申し出て共用部を歩いてみる、案内の途中で立ち止まって職員と入居者のやりとりを眺めてみる。この2つで、パンフレットではわからない日常が見えてきます。

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申し込みから入居までの流れ

  1. 情報収集・候補を絞る(1〜2週間)

    ケアマネジャーや地域包括支援センターに希望条件(場所・予算・介護度)を伝え、候補を出してもらいます。民間の紹介センターも使えますが、紹介手数料の関係で特定の施設に偏る場合があるため、公的窓口の情報と合わせて判断してください。

  2. 見学(2〜3か所)

    予約して見学。可能なら本人も一緒に。難しければ写真や動画を撮って本人に見せます。前章のチェックリストを持参してください。

  3. 申し込み・書類提出

    申込書、健康診断書、診療情報提供書などを提出します。特養は申し込み後、必要度に応じた優先順位で待機となります(先着順ではありません)。

  4. 面談・入居判定

    施設の相談員や看護師が本人と面談し、受け入れ可能かを判定します。持病や医療的ケアの内容は正確に伝えてください。隠すと入居後にトラブルになります。

  5. 契約・入居

    重要事項説明書の説明を受け、契約。入居一時金がある場合は指定口座へ振り込みます。入居日には日用品と、本人が安心する使い慣れた物(写真・時計・愛用の湯呑みなど)を持ち込みましょう。

体験入居・ショートステイで「お試し」ができる

多くの施設が数日の体験入居を受け付けています。本人が納得しやすく、家族も職員の対応を確かめられます。まずショートステイで慣らしてから本入居、という進め方も現実的です。

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契約前に必ず確認すること

契約書と重要事項説明書は分量が多く、その場で読み切るのは大変です。持ち帰って家族で読むことを申し出てください。断る施設は要注意です。特に次の4点は必ず確認します。

確認項目見るポイント
入居一時金の返還「初期償却」で何%が最初に引かれるか、何年で全額償却されるか。短期間で退去した場合いくら戻るか
月額費用の内訳家賃・管理費・食費・介護サービス費のほか、おむつ代・医療費・理美容・レク費・光熱費が別料金かどうか
費用の改定将来、月額費用が値上げされる条件と、その通知方法
退去の条件どんな状態になったら退去を求められるか(医療依存度・他の入居者への迷惑行為など)、その際の猶予期間

クーリング・オフに相当する制度がある

有料老人ホームには、入居後一定期間内(90日以内)に契約を解除した場合、実費を除いた入居一時金が返還される仕組み(短期解約特例、いわゆる90日ルール)があります。「入ってみたけれど合わなかった」ときの備えとして、契約書で必ず確認しておいてください。

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本人が嫌がるときの向き合い方

「施設には絶対に入らない」と言う親は珍しくありません。ここで正面から説得しようとすると、関係が悪くなるだけで前に進みません。

  1. 「施設」という言葉を使わない

    「食事とお風呂が付いた住まい」「看護師さんがいる家」など、本人にとってのメリットの言葉に置き換えます。→ 親との話し方

  2. ショートステイから慣らす

    いきなり入居ではなく、数日のお泊まりから。「家族が旅行に行く間だけ」という理由なら受け入れやすく、本人が「思ったより悪くない」と感じるきっかけになります。

  3. 第三者から伝えてもらう

    子どもの言葉は聞かなくても、医師やケアマネジャーの言葉なら受け入れる親は多いものです。「先生から一度話していただけませんか」と相談してみてください。

  4. 家族の限界も正直に伝える

    「私はもう限界だから」ではなく、「このままだと私が倒れて、お父さんの世話ができなくなる」と本人のための理由として伝えると届きやすくなります。

罪悪感を抱えなくていい

「施設に入れるのはかわいそう」と自分を責める家族は少なくありません。けれど、家族が疲れ果てて優しくできなくなるより、専門職に囲まれて安全に暮らすほうが、本人にとって良い選択であることは多いのです。施設に入っても家族の関係は終わりません。面会に行き、話を聞く役割はずっと続きます。

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よくある質問

特別養護老人ホームはどのくらい待ちますか?

地域と本人の状況によって大きく異なります。都市部では長く待つ例がある一方、地方では比較的早く入れることもあります。特養は申し込み順ではなく、介護の必要度や家族の状況などを点数化した優先順位で決まるため、状況が変わったら施設に伝えて情報を更新してもらってください。複数の特養に同時に申し込むこともできます。

お金が足りない場合はどうすればいいですか?

まず所得・資産が一定以下の方が対象の負担限度額認定を申請してください。特養やショートステイの食費・部屋代が軽減されます。あわせて高額介護サービス費も活用します。それでも難しい場合は、世帯分離で負担段階が下がるケースや、生活保護の介護扶助という選択肢もあります。まず市区町村の福祉窓口へ相談を。→ 負担を軽くする制度

見学は本人を連れて行くべきですか?

本人が納得して入居するのが理想なので、可能なら一緒が望ましいです。ただし体調や認知症の状態によっては、環境の変化が負担になることもあります。その場合は家族が先に下見をして候補を絞り、良さそうな1か所だけ本人と訪ねる、という二段構えが現実的です。

施設に入ったら介護保険の手続きはどうなりますか?

介護付き有料老人ホームや特養では、施設のケアマネジャーが担当に変わります。住所を施設に移す場合は住民票の異動が必要ですが、特養などでは前の市区町村が引き続き保険者となる住所地特例という仕組みがあります。手続きは施設の相談員が案内してくれるので、指示に従えば大丈夫です。