空き家として持ち続けるコストとリスク

誰も住まない家でも、毎年お金は出ていきます。何にいくらかかるのか、そして税金が上がる条件と近隣への責任を整理します。

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空き家を持ち続けると、毎年いくら出ていくのか

誰も住んでいない家でも、持っているだけでお金がかかります。地方の一戸建て(土地150平方メートル・木造30坪)を例にすると、おおよそ次のような支出になります。

空き家を1年保有する費用の目安
項目年間の目安備考
固定資産税・都市計画税5万〜15万円住宅用地の特例が効いている状態。外れると数倍になる
火災保険・地震保険1万〜5万円空き家は割高になることがある
電気・水道の基本料金1万〜3万円管理のために契約を残す場合
草刈り・庭木の手入れ3万〜15万円自分でやれば無料だが、通う交通費がかかる
空き家管理サービス6万〜12万円月5,000〜10,000円が中心
帰省の交通費2万〜10万円距離と回数による
合計年10万〜50万円自分で管理するか委託するかで大きく変わる

10年で数百万円

年20万円としても、10年で200万円です。その間に建物の価値は下がり続け、売れる可能性も狭まっていきます。「使わないけれど、とりあえず持っておく」という選択が、実は最も高くつくことがあります。

固定資産税が最大6倍になる仕組み

空き家の固定資産税が上がるまでの4段階と、住宅用地の特例の比較図
指導の段階で対応すれば、税金が上がる事態は避けられます

「空き家を放置すると固定資産税が6倍になる」という話をよく聞きます。正確には次のような仕組みです。

住宅用地の特例

住宅が建っている土地には、固定資産税の課税標準額を軽減する特例があります。

住宅用地の特例
区分面積固定資産税都市計画税
小規模住宅用地200平方メートルまで課税標準額が6分の13分の1
一般住宅用地200平方メートルを超える部分課税標準額が3分の13分の2

この特例が外れると、税額は最大で6倍近くになります(実際には負担調整措置があるため、そのまま6倍になるとは限りません)。

特例が外れる2つのケース

  • 特定空家等に指定され、勧告を受けた場合:倒壊のおそれがある、著しく衛生上有害、著しく景観を損なっている、といった状態の空き家です。
  • 管理不全空家等に指定され、勧告を受けた場合:2023年12月施行の改正空家等対策特別措置法で新設されました。「そのまま放置すれば特定空家になるおそれがある」状態で、これまでより早い段階で指定されます。

いきなり税金が上がるわけではない

指定されたらすぐに税金が上がるのではなく、次の順に進みます。

  1. 助言・指導(この段階では税制上の影響なし)
  2. 勧告 → ここで住宅用地の特例が外れる
  3. 命令 → 従わないと50万円以下の過料
  4. 行政代執行 → 自治体が強制的に解体し、費用は所有者に請求される

つまり、自治体から連絡が来た段階で対応すれば、税金が上がる事態は避けられます。役所からの通知を無視しないことが最大の防御です。

解体しても税金は上がる

建物を壊して更地にした場合も、住宅用地の特例はなくなります。「税金が上がるから解体できない」という状態は、実は多くの空き家所有者が直面している問題です。判断の考え方は売る・貸す・解体の判断軸で整理しています。

空き家は驚くほど早く傷む

人が住まなくなった家は、住んでいる家より早く劣化します。理由は換気と使用がなくなるためです。

  • 湿気とカビ:窓を開けないため、湿気がこもります。畳や押し入れ、壁紙にカビが広がります。
  • 排水管の封水切れ:トイレや洗面の排水口にある水がなくなると、下水の臭いと害虫が上がってきます。
  • 雨漏り:気づく人がいないため、屋根からの水がじわじわと構造材を傷めます。
  • シロアリ:湿った木材はシロアリの好物です。発見が遅れると柱まで食われます。
  • 動物の侵入:ハクビシン、アライグマ、ネズミ、スズメバチ。天井裏に住みつくと、糞尿で天井が抜けることもあります。
  • 庭木の繁茂:数年で人の背丈を超え、隣家や道路に越境します。

建物の劣化は、そのまま売却価格の下落につながります。数年放置したことで「古家付き土地」としてしか売れなくなり、解体費を差し引いた金額でしか売れなくなるケースは珍しくありません。

最低限やるべき管理

月1回、次の作業をするだけで劣化の速度はかなり抑えられます。

  • すべての窓と押し入れを開けて30分〜1時間換気する
  • 各所の水道を1〜2分流す(排水口の封水を回復させる)
  • 郵便物を回収する
  • 外周を1周して、屋根・外壁・庭木・塀を目で確認する

通えない場合の方法は空き家の管理にまとめました。

近隣への責任とトラブル

空き家の問題は、お金だけではありません。他人に損害を与えたとき、所有者が責任を負います

工作物責任

民法717条により、建物や塀などの設置・保存に瑕疵があって他人に損害を与えた場合、所有者は損害賠償の責任を負います。「知らなかった」「遠方に住んでいた」は理由になりません

  • 台風で屋根瓦が飛び、隣家の車を壊した
  • ブロック塀が倒れて通行人がけがをした
  • 庭木が倒れて道路をふさいだ
  • 敷地内の穴に人が落ちてけがをした

よくある近隣トラブル

  • 庭木・雑草の越境:隣家に枝が伸びる、落ち葉が落ちる。2023年4月の民法改正で、一定の条件下では隣地の所有者が越境した枝を自分で切れるようになりました。つまり、放置していると隣人に切られたうえで費用を請求される可能性があります。
  • 害虫・害獣の発生源になる
  • 不法投棄の場所にされる:一度ごみが捨てられると、次々に捨てられます。
  • 放火・不審者の侵入:管理されていない空き家は放火の対象になりやすいとされています。

火災保険は必ず継続する

空き家だからと火災保険を解約するのは危険です。放火や漏電で火災が起き、隣家に延焼した場合、失火責任法により重過失がなければ隣家への賠償義務は生じませんが、自分の建物の解体費用や後片付けの費用は自己負担になります。焼け残った建物の撤去には、通常の解体以上の費用がかかります。

なお、空き家は「住宅物件」ではなく「一般物件」として扱われ、保険料が上がったり、引き受けを断られたりすることがあります。空き家であることを伝えずに契約していると、いざというときに支払われないおそれがあるため、必ず保険会社に現状を伝えてください。

それでも持ち続けるという選択

ここまでコストとリスクを並べましたが、「持ち続ける」が悪い選択とは限りません。次のような場合は、保有に合理性があります。

  • 数年以内に自分か子どもが住む予定がある
  • 周辺の再開発や道路計画があり、地価の上昇が見込める
  • 親族の誰かが将来使う可能性を検討中で、期限を決めて保留している
  • 賃貸に出せる状態で、借り手が見つかりそう

大切なのは、「決められないから持っている」と「意図して持っている」を区別することです。後者なら、期限(たとえば2年)と、期限が来たときにどうするかを決めておいてください。

保有するなら、最低限これだけは

  1. 相続登記を済ませる(名義が親のままでは何も動かせません)
  2. 火災保険を継続し、空き家であることを保険会社に伝える
  3. 月1回の管理を確保する(自分で通うか、代行を頼むか)
  4. 近隣に連絡先を伝えておく
  5. 期限を決める(いつまでに次の判断をするか)

このページのよくある質問

誰も住んでいませんが、まだ荷物が置いてあります。空き家ですか。

空家等対策特別措置法では「おおむね年間を通じて使用実績がない」建物が空家等とされます。荷物を置いているだけで、人の出入りがほとんどない場合は空き家に該当する可能性があります。ただし、直ちに特定空家等に指定されるわけではありません。

固定資産税を払っていれば放置してもよいのでしょうか。

納税は所有者の義務ですが、それとは別に適切に管理する責務があります。倒壊や落下物で他人に損害を与えた場合、所有者が賠償責任を負います。

空き家の火災保険はどこで入れますか。

一般の損害保険会社でも引き受けているところがありますが、住宅物件ではなく一般物件として扱われ、保険料が高くなることがあります。空き家向けの商品を扱っている会社や、少額短期保険を検討する方法もあります。

自治体から「管理不全空家」の通知が来ました。どうすればよいですか。

無視しないことが最も重要です。指導の段階で草刈りや修繕などの対応をすれば、勧告に進まず、固定資産税の特例も維持されます。対応が難しい場合は、その旨を担当課に相談してください。