売却の流れと税金

相続した実家を売るときは、条件が合えば3,000万円の特別控除が使えます。使えるかどうかで税額が数百万円変わるため、流れと条件を先に押さえておきましょう。

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売却の流れ

  1. 相続登記を済ませる名義が親のままでは売れません。ここが済んでいないと契約できないため、最優先です。
  2. 査定を受ける複数社に依頼します。机上査定(データのみ)と訪問査定があり、正確な金額は訪問査定で出ます。
  3. 不動産会社と媒介契約を結ぶ一般媒介・専任媒介・専属専任媒介の3種類。それぞれ特徴が違います(後述)。
  4. 売り出す販売価格を決めて広告を出します。内覧の対応が必要になります。
  5. 買主と条件を交渉する価格、引き渡し時期、残置物の扱い、契約不適合責任の範囲。
  6. 売買契約を結ぶ手付金を受け取ります。印紙税がかかります。
  7. 引き渡しと決済残代金を受け取り、所有権移転登記をします。同時に鍵を渡します。
  8. 確定申告をする売った翌年の2月16日〜3月15日。特例を使う場合は必ず申告が必要です。

相続登記から引き渡しまで、順調に進んでも半年程度、地方や条件の悪い物件では1年以上かかることもあります。

媒介契約の3種類

媒介契約の比較
種類複数社に依頼自分で買主を見つける報告義務レインズ登録
一般媒介できるできるなし任意
専任媒介できないできる2週間に1回以上7日以内に義務
専属専任媒介できないできない1週間に1回以上5日以内に義務

専任・専属専任は1社に絞る代わりに、その会社が本気で動いてくれる傾向があります。一般媒介は複数社に依頼できますが、どの会社も「決まらないかもしれない」と考え、広告費をかけにくくなる面があります。

実家の売却では、地元に強い会社と専任媒介を結ぶケースが多く見られます。ただし、契約期間は3か月が上限なので、動きが悪ければ更新せずに会社を変えられます。

囲い込みに注意

専任媒介で預かった物件を、他社からの問い合わせに応じず自社の買主だけに紹介する行為を「囲い込み」といいます。売主にとっては買主の候補が減り、売却が遅れたり安くなったりする不利益があります。レインズ(不動産の情報ネットワーク)への登録証明書を必ず受け取り、状況報告を求めることで、ある程度は防げます。

売却にかかる費用

売却にかかる費用の目安
項目金額の目安
仲介手数料売買価格の3%+6万円+消費税が上限(800万円以下の物件は最大33万円まで請求可能)
印紙税売買価格1,000万円超5,000万円以下で1万円(軽減措置適用時)
登記費用(抵当権抹消がある場合)1万〜2万円+司法書士報酬1万〜2万円
測量・境界確定35万〜80万円(必要な場合)
解体費用90万〜200万円(更地にする場合)
残置物(家財)の処分5万〜30万円
ハウスクリーニング3万〜15万円
譲渡所得税・住民税利益に対して約20%(長期譲渡の場合)

おおまかには売却価格の4〜6%を諸費用として見ておくと、大きく外れません(解体や測量が必要な場合を除く)。

売却の税金と3000万円の特別控除

不動産を売って利益が出ると、譲渡所得税と住民税がかかります。

譲渡所得の計算式

譲渡所得 = 売却価格 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除

  • 取得費:買ったときの価格+購入時の諸費用-建物の減価償却費。証明する書類がないと売却価格の5%しか認められません
  • 譲渡費用:仲介手数料、印紙税、解体費用など
  • 税率:所有期間5年超で20.315%(長期譲渡)、5年以下で39.63%(短期譲渡)。相続の場合は被相続人が取得した日を引き継ぐため、通常は長期になります

空き家の3000万円特別控除(被相続人の居住用財産の特例)

相続した実家を売る場合の、最も大きな特例です。条件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。

主な条件

  • 1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された家屋であること
  • 区分所有建物(マンション)でないこと
  • 相続の直前に被相続人が一人で住んでいたこと(老人ホームに入居していた場合も、一定の条件を満たせば対象)
  • 相続してから売却まで、事業や貸付、居住に使っていないこと
  • 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
  • 売却代金が1億円以下であること
  • 耐震基準を満たすようリフォームするか、建物を解体して売ること

2024年からの改正で使いやすくなりました

2024年1月1日以降の譲渡からは、買主が引き渡し後(譲渡の日の属する年の翌年2月15日まで)に耐震改修または解体をした場合でも、特例が使えるようになりました。従来は売主が引き渡し前に工事を終える必要があり、費用も手間も売主が負担していたため、大きな改善です。

一方で、相続人が3人以上の場合、控除額が1人あたり2,000万円に縮小されました。この特例の適用期限は2027年12月31日までです。

必ず確定申告が必要です

この特例を使って税額が0円になる場合でも、確定申告をしなければ適用されません。申告には、市区町村が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」が必要です。取得には時間がかかるため、早めに市区町村へ相談してください。

取得費加算の特例とは選べません

相続税を納めた人が使える「取得費加算の特例」とは併用できません。どちらが有利かは金額次第です。相続税を多く払った場合は取得費加算のほうが有利になることもあるため、売却前に税理士に試算してもらうことをおすすめします。

相続人が複数いるときの売り方

実家を売って代金を分ける場合、誰の名義にして売るかで手続きが変わります。方法は2つです。

方法1:共有名義にして、全員で売る

相続人全員の共有名義に登記し、全員が売主として契約します。

  • 売買契約書に全員が署名・押印する必要があります
  • 決済の日に全員が集まるか、代表者に委任状を出します
  • 売却代金は持分に応じて分配され、各自がそれぞれ確定申告をします
  • 空き家の3000万円特別控除は、条件を満たせば各人が使えます(2024年1月以降の譲渡では、相続人3人以上の場合1人2,000万円)

方法2:1人の名義にして売り、代金を分ける(換価分割)

代表者1人の名義に登記し、その人が売却して代金を分配します。手続きは軽くなりますが、注意点があります。

遺産分割協議書に「換価分割」と明記する

代表者1人の名義で売って代金を分けたとき、その旨が遺産分割協議書に書かれていないと、代表者から他の相続人への贈与とみなされ、贈与税が課されるおそれがあります。

協議書には「換価分割のため、便宜上◯◯の名義で登記し、売却代金から諸費用を控除した残額を、法定相続分に応じて各相続人に分配する」といった趣旨を明記してください。文言に不安があれば、司法書士に確認を。

また、この方法では売却益の税金は名義人1人にかかるのが原則です(実質的に共有と認められる場合を除く)。金額が大きい場合は、税理士に事前相談することをおすすめします。

どちらを選ぶか

複数人で相続した実家の売り方の比較
共有名義で売る1人の名義で売る(換価分割)
登記の手間全員分の書類が必要1人分で済む
契約・決済全員の署名か委任状が必要名義人だけで進められる
確定申告各自が行う原則として名義人のみ
3000万円控除条件を満たせば各人が使える名義人のみ
贈与税のリスクなし協議書の書き方を誤ると発生
向いている場合相続人が少なく協力できる相続人が多い、遠方に散っている

控除を人数分使えることを考えると、金額が大きい場合は共有名義にして全員で売るほうが有利になることがあります。判断の前に試算してください。

少しでも高く売るために

1. 複数社の査定を比べる

査定額は会社によって数百万円違うことがあります。ただし、最も高い査定を出した会社が最も高く売ってくれるとは限りません。媒介契約を取るために高い金額を出す会社もあります。査定の根拠(近隣の成約事例)を必ず聞いてください。

2. 片付けと清掃をする

荷物が残ったままの家と、空っぽで清掃された家では、内覧時の印象がまったく違います。特に水回りの清潔感は、価格交渉の材料になりやすい部分です。

3. 売り出す時期を選ぶ

一般に、1〜3月と9〜11月は住み替え需要が動く時期です。年末年始と真夏は動きが鈍くなります。

4. 隣地の所有者に声をかける

意外と有力です。土地を広げたい、駐車場が欲しい、といった理由で、市場価格より高く買ってもらえることがあります。

5. 契約不適合責任の範囲を明確にする

売った後で雨漏りやシロアリが見つかると、売主が責任を問われることがあります。相続した家は、売主自身が住んでいないため状態を把握しきれません。分かっている不具合はすべて告知し、契約書で責任の範囲を限定する(免責特約を入れる)よう不動産会社と相談してください。

告知は必ず正直に

雨漏り、シロアリ、傾き、過去の浸水、近隣とのトラブル、事件事故の有無。隠して売ると、後から損害賠償を請求されるおそれがあります。正直に伝えたうえで価格に反映させるほうが、結果的に安全です。

このページのよくある質問

親が家を買ったときの契約書が見つかりません。

取得費を証明できない場合、売却価格の5%を取得費とみなして計算します。税額が大きく変わるため、通帳の記録、住宅ローンの返済表、建築時のパンフレットなど、間接的な資料でも探してみてください。一定の資料で認められる場合もあるので、税理士に相談する価値があります。

売却代金は誰のものになりますか。

相続登記で誰の名義にしたかによります。共有名義で売った場合は持分に応じて分けます。1人の名義にして売り、代金を分ける場合は、遺産分割協議書に「換価分割」であることを明記しておかないと、贈与とみなされるおそれがあります。

なかなか売れません。どうすればよいですか。

価格の見直し、不動産会社の変更、買取業者への相談という順で検討します。買取は市場価格の6〜8割程度になりますが、確実で早いという利点があります。

空き家の3000万円控除は、兄弟で分けて売っても使えますか。

各相続人がそれぞれ適用を受けられますが、2024年1月以降の譲渡では、相続人が3人以上の場合、1人あたりの控除額は2,000万円に縮小されています。