実家じまいの全体像と、やる順番

実家じまいでいちばん多い失敗は、順番を間違えることです。ここでは全体でどんな作業があり、どのくらいの時間とお金がかかるのかを、最初にまとめて把握します。

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実家じまいとは何をすることなのか

「実家じまい」という言葉に決まった定義はありませんが、実際にやることは次の3つに分けられます。

実家じまいの3つの仕事と期間の目安
やること中身だいたいの期間
① 家の中を空にする生活用品の処分、家具・家電の搬出、写真や思い出の品の整理、仏壇の扱い1か月〜1年
② 権利と契約を整理する家と土地の名義変更、電気・ガス・水道の解約、火災保険の名義変更、固定資産税の納税義務者の変更2か月〜1年
③ 家の出口を決めて実行する売る・貸す・解体する・持ち続けるのどれかを選び、実行する3か月〜2年以上

期間に幅があるのは、家の状態と家族の状況で作業量がまったく違うためです。荷物が少なく相続人も1人なら3か月で終わることもありますし、荷物が多く、相続人が複数いて話し合いに時間がかかると2年以上かかることもあります。

最初に押さえておきたいこと

実家じまいは、時間が経つほど不利になる作業です。荷物は減らず、家は傷み、相続人はさらに世代が下がって増えていきます。「まだ決められない」と保留にする期間そのものにコストがかかっていると考えると、判断がしやすくなります。

やる順番と、それぞれの目安

実家じまいの6つのステップを示した流れ図
実家じまいの大きな流れ。2と5でつまずく人が多くいます

細かい作業を並べると次のようになります。上から順に進めるのが基本です。

  1. 家族で「最終的にどうするか」の仮決めをする売る前提なのか、当面は残すのか。仮でよいので方針を置くと、処分の判断が速くなります。売る予定なら家具はほぼ処分ですが、貸す予定ならエアコンなどは残すこともあります。
  2. 重要書類と貴重品を回収する通帳、印鑑、キャッシュカード、保険証券、権利証(登記識別情報)、年金関係、有価証券、借用書、鍵、車検証。これらは1か所にまとめて持ち帰ります。
  3. 家の名義と資産の状況を調べる登記事項証明書、固定資産税の納税通知書、名寄帳を取り寄せます。抵当権が残っていないかもここで分かります。
  4. 相続人を確定させる(相続が起きている場合)戸籍をさかのぼって集めます。ここで初めて知る相続人が出てくることもあります。
  5. 残す・売る・捨てるを仕分ける部屋単位ではなく「引き出し1段」など小さく区切って進めるのがコツです。
  6. 業者の見積もりを取る片付け・不用品回収、解体、売却の査定。それぞれ2〜3社から取り、金額と内訳を比べます。
  7. 片付けと処分を実行する自分たちで運べるものと、業者に任せるものを分けます。
  8. 名義変更(相続登記)をする遺産分割協議書と戸籍一式を揃えて法務局に申請します。
  9. ライフラインと契約を解約する電気・ガス・水道・電話・インターネット・新聞・NHK・火災保険。片付けが終わってからにしないと作業中に困ります。
  10. 家の出口を実行する売却なら媒介契約から引き渡しまで。解体なら業者の選定と工事、そして滅失登記まで。

どのくらいの期間がかかるのか

実際にかかる期間は、次の要素でほぼ決まります。

  • 荷物の量:物の多い家は、片付けだけで数か月〜1年かかります。
  • 相続人の人数と関係:1人なら早く、複数で意見が割れると年単位になります。
  • 実家までの距離:遠方だと1回の帰省でできる作業量が限られます。
  • 家の売れやすさ:都市部なら数か月、地方や再建築ができない土地だと年単位、あるいは売れないこともあります。
状況別・実家じまいにかかる期間の目安
ケース片付け名義変更売却まで合計の目安
近くに住み、荷物が少なく、相続人1人1か月1〜2か月3〜6か月半年前後
車で数時間、荷物が普通、相続人2〜3人3〜6か月3〜6か月6〜12か月1年〜1年半
遠方、荷物が非常に多い、相続人4人以上6か月〜1年6か月〜1年以上1年以上2年以上

費用の全体像をざっくりつかむ

費用は「片付け」「手続き」「家の処分」の3つに分けて考えると見通しが立ちます。以下は一戸建て(延床30坪前後)を想定した幅です。地域と家の状態で上下します。

実家じまいにかかる費用の目安(一戸建て・延床30坪前後)
項目目安備考
片付け・不用品処分10万〜60万円自分でやる割合が多いほど安くなる。物量で大きく変動
ハウスクリーニング3万〜15万円売却前に入れるかは物件次第
相続登記5万〜15万円登録免許税(評価額の0.4%)+司法書士報酬。自分でやれば実費のみ
解体(する場合)90万〜200万円木造30坪の目安。付帯工事や残置物で増える
売却の諸費用売却額の4〜6%仲介手数料・印紙代・測量・境界確定など
持ち続ける場合年10万〜30万円固定資産税・火災保険・水道光熱の基本料金・管理費用

数字の内訳と、どこを削れるかは費用の全体像で詳しく扱っています。

よくあるつまずき方と、その避け方

つまずき1:先に片付けてしまい、大事なものを失う

いちばん多い失敗です。業者に一括で片付けを頼んだあとに、権利証や保険証券、へそくり、価値のある骨董品が見つからなくなるケースがあります。大量処分の前に、書類と貴重品だけは必ず回収する。これだけで多くの事故を防げます。

つまずき2:名義を放置して、売れない家になる

家の名義が亡くなった親のままでは、売却も賃貸も担保設定もできません。さらに、名義変更をしないまま相続人が亡くなると、次の世代へ相続人が枝分かれし、10人以上と連絡を取らなければならなくなることもあります。

つまずき3:1社だけの見積もりで決めてしまう

片付けも解体も、業者によって金額が大きく変わる業種です。急いでいるときほど「来てくれた1社」で決めがちですが、2〜3社を比べるだけで数万円から数十万円変わることがあります。

つまずき4:兄弟に相談せず進めて、後からもめる

「自分がやるしかない」と1人で背負って進め、あとから「勝手に捨てた」と言われるパターンです。作業を分担できなくても、写真を撮って共有する・処分の前に一声かけるだけで、後の対立をかなり減らせます。

つまずき5:空き家のまま数年放置する

誰も住まない家は驚くほど早く傷みます。換気されない家はカビが広がり、屋根や雨どいの劣化に気づかず雨漏りが進みます。庭木が伸びれば近隣とのトラブルにもなります。維持しながら判断を先送りする選択もありますが、その費用とリスクは知ったうえで選ぶべきです。

1人で背負い込まないための考え方

実家じまいは、物理的な作業量よりも「決めることの多さ」が負担になります。親の思い出が詰まった家で、一つひとつ捨てるかどうかを判断し続ける作業は、想像以上に体力と気力を使います。

次の3つは、意識して分けてしまってよい仕事です。

  • 体力が要る仕事:家具の搬出、大量のごみ出し。ここは業者に任せる価値が高い部分です。
  • 手続きの仕事:戸籍集め、登記申請、解約手続き。書類仕事が得意な家族がいれば任せられます。
  • 判断の仕事:何を残すか。ここだけは家族で分担しづらいので、体力仕事を減らして時間を確保します。

完璧にやろうとしない

「全部の写真を見返してから捨てる」「一つも間違えずに仕分ける」を目指すと、まず終わりません。迷ったものは一時保管の箱に入れて先へ進むという運用にするだけで、作業は何倍も速くなります。判断できなかった箱は、半年後にもう一度開けば十分です。

このページのよくある質問

親がまだ元気ですが、今から何をしておけばよいですか。

家と土地の名義の確認、保険や預金がどこにあるかの一覧づくり、そして親自身に「この家をどうしたいか」を聞いておくことです。物を減らす作業は本人の同意がないと進みませんが、情報の整理は今日からできます。

実家じまいを業者にすべて任せることはできますか。

片付けから不用品処分、清掃、不動産の売却仲介まで一括で請け負う会社もあります。ただし、名義変更などの法律的な手続きは司法書士、税金は税理士の領域です。窓口を1つにまとめると楽ですが、その分費用は上がる傾向があります。

片付けの途中で親が入院しました。進めてよいのでしょうか。

親名義の家の物を勝手に処分するのは、法律上も感情の面でもトラブルのもとです。可能なら本人の意思を確認し、難しい場合でも家族間で合意を取り、写真を残しながら進めることをおすすめします。

実家じまいの費用は誰が払うのが普通ですか。

決まりはありません。相続が起きているなら遺産(現金)から出すのが分かりやすく、もめにくい方法です。誰か1人が立て替える場合は、必ず領収書を残しておいてください。