片付けの実務と、業者の選び方
実家の片付けは、順番と道具の準備で進み方がまったく変わります。ここでは初日にやること、失敗しない進め方、そして業者に頼むときの見積もりの読み方をまとめます。
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始める前に用意するもの
片付けは道具の準備で速さが変わります。現地に着いてから買いに走る時間がもったいないので、初日に持ち込むものをまとめておきます。
| 分類 | 用意するもの |
|---|---|
| ごみ袋 | 自治体指定のごみ袋(燃える・燃えない・プラなど)を各20〜30枚。指定袋は現地のスーパーやコンビニで買えます |
| 梱包 | 段ボール(10〜20箱)、ガムテープ、新聞紙かプチプチ、ひも(雑誌をしばる) |
| 安全具 | 軍手か作業用手袋、マスク(ほこりが大量に出ます)、スリッパではなく底の厚い靴下や上履き |
| 道具 | カッター、はさみ、ドライバー、油性ペン、養生テープ、懐中電灯、ブルーシート |
| 分類用 | 「残す」「迷う」「捨てる」を書いた紙(箱に貼る)、貴重品を入れる封筒やファイル |
| その他 | 掃除機、ほうき、ちりとり、雑巾、脚立、キャリーカート |
先に確認しておくこと
ごみ収集のルールと日程は自治体でまったく違います。粗大ごみは予約制で、混み合う時期は2〜3週間待つこともあります。片付けの日程が決まったら、まず市区町村のホームページで収集日と粗大ごみの申込方法を確認し、必要なら先に予約を入れてください。
最初にやること:書類と貴重品の回収
大量処分の前に、必ずこれだけは探し出して確保します。ここを飛ばすと、後で取り返しがつきません。
絶対に確保するもの
- 通帳・キャッシュカード・印鑑(実印、銀行印、印鑑登録カード)
- 不動産の権利証(登記済権利証、または登記識別情報通知)
- 生命保険・医療保険の証券、共済の書類
- 年金手帳・年金証書、後期高齢者医療被保険者証
- 有価証券(株券、投資信託、国債の書類)、証券会社からの郵便物
- 借入の書類(ローン契約書、借用書、消費者金融のカード)
- 固定資産税の納税通知書、車検証、鍵一式
- 遺言書(見つけても開封しないこと。詳しくは下記)
遺言書を見つけたら開けない
封のされた自筆の遺言書は、勝手に開封してはいけません。家庭裁判所での「検認」という手続きが必要で、無断で開封すると過料の対象になります(開封しても遺言が無効になるわけではありませんが、余計なトラブルを招きます)。公正証書遺言と、法務局の保管制度を使った自筆証書遺言は検認が不要です。
隠し場所になりやすい場所
高齢の方は、銀行より家の中を信用していることがあります。次の場所は必ず確認してから処分してください。
- 仏壇の引き出し、位牌の裏、仏壇の下の収納
- タンスの引き出しの底、衣類のポケット、着物のたとう紙の中
- 本の間、アルバムの台紙の裏、額縁の裏
- 米びつ、冷凍庫、天井裏、押し入れの天袋
- 封筒に入って輪ゴムでまとめられた状態の現金
実際に、遺品整理の現場で現金や金券が出てくることは珍しくありません。紙類は必ず1枚ずつ確認してから捨てるのが鉄則です。
つまずかない進め方
やみくもに始めると必ず途中で止まります。次の順番が最も進みやすい形です。
- ゴールを決める(何日でどこまで)「今回の帰省では1階だけ」など、範囲と期限を先に切ります。全部やろうとすると終わりが見えず、気力が続きません。
- 空き部屋を1つ作る仕分けした物を置く場所が必要です。使っていない部屋を1つ空にして「作業スペース」にします。ここがないと、物を右から左へ動かすだけになります。
- 明らかなごみから捨てる空き箱、期限切れの食品や薬、壊れた家電、古い新聞や雑誌、汚れた衣類。判断のいらないものを先に減らすと、視界が開けて作業が加速します。
- 玄関から遠い部屋、使っていない部屋から手をつける思い出の詰まった部屋(親の寝室や居間)は最後に回します。最初にそこへ行くと、写真を見返して1日が終わります。
- 「残す」「迷う」「捨てる」の3つに分ける「迷う」を作るのがコツです。判断できないものを無理に決めようとしないでください。
- 迷い箱に期限を書く「2027年3月まで」と箱に書き、その日まで開けなければ中身を見ずに処分する、というルールにします。
- 大物の搬出を業者に依頼するタンス、ベッド、冷蔵庫、ピアノ。ここは体力と車の問題なので、無理せず頼みます。
- 最後に掃除をする売却する場合、清掃されているかどうかで内覧の印象が変わります。
1日にやる時間は決めておく
実家の片付けは、体力よりも精神的に消耗します。「今日は3時間」と決めて、時間が来たら物理的に手を止めるほうが、結果的に長続きします。特に親が亡くなったばかりの時期は、無理をしないでください。
どこまで自分でやり、どこから業者に頼むか
すべてを自分でやれば費用はごみ処理代だけで済みますが、時間と体力の消耗は大きくなります。判断の目安は次のとおりです。
| 作業 | 自分でやる | 業者に頼む |
|---|---|---|
| 小物・衣類・書類の仕分け | ◎ 判断が必要なので自分向き | △ 貴重品を見落とすリスク |
| 大量のごみ出し | ○ 収集日に合わせて何度も出す必要あり | ◎ 一度で運び出せる |
| 家具・家電の搬出 | △ 2人以上と車が必要。けがのリスク | ◎ 費用に見合う |
| 家一軒まるごと | × 現実的でないことが多い | ◎ 1〜2日で終わる |
| ハウスクリーニング | ○ 売らないならここまでで十分 | ◎ 売却前なら効果あり |
| エアコン・照明の取り外し | △ 電気工事が必要な場合あり | ◎ 安全 |
現実的には、書類と貴重品と思い出の品だけ自分で抜き、残りを業者に任せるのが、費用と負担のバランスが取りやすい形です。
見積もりの取り方と相場の幅
片付け・不用品回収の料金は、業者によって驚くほど違います。同じ2DKの部屋でも、8万円と25万円の見積もりが並ぶことがあります。差が出る理由は次のとおりです。
- 物量の見積もり方:トラックの台数(軽トラ・2トン)で決める会社と、作業員の人数×時間で決める会社があります。
- 買取をするかどうか:買い取れるものがあれば、その分を差し引いてくれる会社があります。
- 処分費の扱い:見積もりに処分費が含まれているか、別料金かで大きく変わります。
- 建物の条件:エレベーターがない、道が狭くてトラックが停められない、階段が急。こうした条件で追加料金が発生します。
間取り別の費用の目安
| 間取り | 費用の目安 | 作業員・時間の目安 |
|---|---|---|
| 1K・1R | 3万〜8万円 | 1〜2名/1〜3時間 |
| 1DK | 5万〜12万円 | 2名/2〜4時間 |
| 2DK | 9万〜25万円 | 2〜3名/半日 |
| 3DK・3LDK | 17万〜50万円 | 3〜4名/1日 |
| 4LDK以上・一戸建て | 22万〜60万円以上 | 4〜6名/1〜2日 |
これはあくまで幅です。同じ間取りでも、物が少なければ下限、いわゆる「ごみ屋敷」に近い状態なら上限を超えます。庭や物置、納屋、農機具がある一戸建ては、さらに上乗せになります。
見積もりで必ず確認する5つ
- 総額はいくらか(「一式」だけの見積書は避ける)
- 処分費・車両費・人件費・階段作業費が含まれているか
- 当日に追加料金が発生する条件は何か
- 買取をしてくれるか、その分は差し引かれるか
- 貴重品や書類が出てきたときにどうするか
業者選びは失敗するとお金だけでなくトラブルにもつながります。業者の選び方と悪質業者の見分け方に詳しくまとめました。
物が極端に多い家の場合
足の踏み場がない、床が見えない、部屋が物で埋まっている。実家がこの状態になっていることは、決して珍しくありません。高齢になって片付けができなくなる、認知症で物を捨てられなくなる、家族が離れて誰も気づかなかった。原因はさまざまです。
この状態では、通常の片付けの進め方は通用しません。次の点が変わります。
1. 自力でやろうとしない
物量が一定を超えると、個人の作業では終わりません。2トントラック数台分の量になることも多く、ごみ袋に詰めて出すだけで何か月もかかります。専門の業者に依頼したほうが、費用を含めても結果的に負担が小さいケースがほとんどです。
2. 費用は通常の2〜3倍を見込む
物量に比例して料金が上がるため、一戸建てで60万〜150万円になることもあります。害虫の駆除や消臭が必要な場合、さらに加算されます。見積もりは必ず現地を見てもらってから取ってください。
3. 安全対策をする
- マスクと手袋:ほこり、カビの胞子、害虫の死骸が大量にあります。
- 底の厚い靴:床に何が落ちているか分かりません。
- 長袖・長ズボン:肌の露出を減らします。
- 換気:作業前に窓を全開にして、しばらく空気を入れ替えます。
- 1人で入らない:物が崩れる危険があります。
4. 貴重品の捜索を業者に伝えておく
物が多い家ほど、現金や通帳が思わぬ場所から出てきます。契約前に「貴重品が出た場合の扱い」を必ず取り決めてください。
5. 親が存命なら、無断で進めない
本人の所有物を無断で処分すると、信頼関係が壊れて以後の協力が得られなくなります。判断能力が下がっている場合でも、家族間で合意を取り、記録を残しながら進めてください。福祉の観点からは、地域包括支援センターに相談するという手もあります。生活状況の把握と、介護サービスにつなぐ支援が受けられることがあります。
近隣から苦情が来ている場合
臭いや害虫で近隣に迷惑がかかっている場合、市区町村の環境衛生の担当課や、空き家対策の担当課に相談すると、対応の窓口を案内してもらえることがあります。行政が強制的に片付けることは基本的にありませんが、放置を続けると管理不全空家等の指定につながることがあります。
作業を軽くする細かいコツ
写真を撮ってから捨てる
「捨てたくないけれど置き場所がない」ものは、写真に撮ってから手放すと気持ちの整理がつきやすくなります。家具や着物、飾り物など、大きなものほど効果があります。
売れるものは先に分ける
まとめて処分すると、価値のあるものも処分費を払って捨てることになります。着物、貴金属、古い時計、カメラ、酒、切手、骨董品、ブランド食器は、いったん別にしておいてください。残す・捨てる・売るで判断の基準を扱っています。
兄弟に「いるか」を聞く順番を決める
「欲しいものがあれば言って」と全員に聞くと、同じものを複数人が希望してもめます。先に希望を書き出してもらい、重なったものだけ話し合うほうが、確実に早く済みます。
近隣への配慮
作業の日はトラックが停まり、音も出ます。前日か当日の朝に両隣と向かいへ挨拶しておくと、後々の関係が違います。空き家になったあとも、近所の目は最大の防犯になります。
作業前後の写真を残す
兄弟間の説明にも、業者とのトラブル防止にも役立ちます。特に「何を処分したか」の記録は、後から必ず効いてきます。
このページのよくある質問
片付けはどのくらいの日数がかかりますか。
ごみが大量に出ます。まとめて捨てる方法はありますか。
親が亡くなった直後で、片付ける気力がありません。
業者に頼むと、勝手に捨てられてしまいませんか。