実家じまいの費用の全体像

片付けだけの話ではありません。手続き、解体、売却、そして「決めずに持ち続ける」ことにもお金がかかります。全部を並べて見比べてみましょう。

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実家じまいの費用は3つに分かれる

「実家じまいはいくらかかるのか」という質問には、家の状態と選ぶ出口によって答えが変わります。ただ、費用の構造はどの家でも同じです。

実家じまいの費用の3区分
区分何にかかるお金か金額の幅
① 家を空にする費用片付け、不用品処分、清掃、仏壇の供養5万〜80万円
② 手続きの費用相続登記、戸籍集め、専門家への報酬、相続税3万〜数百万円(相続税の有無で大きく変わる)
③ 家の出口の費用解体、売却の諸費用、リフォーム、または保有し続ける費用0円〜300万円以上

このうち、努力で下げられるのは①と③の一部です。②の手続き費用は、自分でやるか専門家に頼むかで数万円〜十数万円変わりますが、相続税は財産額で決まるため調整できません。

項目別の費用一覧

一戸建て(木造・延床30坪前後・地方都市)を想定した目安です。

① 家を空にする

①家を空にする費用
項目目安備考
片付け・遺品整理(業者)17万〜60万円3LDK〜一戸建て。物量で大きく変動
自分で片付ける場合のごみ処理代1万〜10万円粗大ごみ・持ち込み処分の実費
家電リサイクル料金1万〜3万円4品目分+収集運搬料
ハウスクリーニング3万〜15万円売却前なら効果あり
仏壇じまい・供養2万〜10万円閉眼供養のお布施を含む
庭木の伐採・草刈り3万〜20万円庭が広いと高くなる

② 手続き

②手続きの費用
項目目安備考
登録免許税(相続登記)評価額の0.4%評価額1,000万円なら4万円
司法書士報酬(相続登記)5万〜15万円自分で申請すれば不要
戸籍・住民票などの取得費3,000〜1万円相続人が多いと増える
登記事項証明書1通480〜600円取得方法で異なる
遺産分割協議書の作成3万〜10万円自分で作れば無料
相続税財産額による基礎控除以下なら0円
税理士報酬(相続税申告)遺産総額の0.5〜1%申告が必要な場合のみ

③ 家の出口

③家の出口の費用
項目目安備考
解体工事(木造30坪)90万〜200万円付帯工事・残置物で増加
滅失登記0〜5万円自分でやれば無料、土地家屋調査士に頼むと4万〜5万円
仲介手数料(売却)売買価格の3%+6万円+消費税が上限1,000万円で約39.6万円
印紙税(売買契約書)1万円前後契約金額による。軽減措置あり
測量・境界確定35万〜80万円境界が不明確な場合に必要
譲渡所得税利益の約20%(長期)特別控除が使えれば0円のことも
保有し続ける場合年10万〜30万円固定資産税・保険・管理費用

ケース別の総額シミュレーション

3つの典型的なケースで、総額を並べてみます。

ケースA:家財が少なく、そのまま売却できた

ケースA:売却できた場合(3000万円特別控除で譲渡所得税は0円と仮定)
項目金額
片付け(自分+一部業者)15万円
清掃5万円
相続登記(司法書士)12万円
仲介手数料(1,200万円で売却)42万円
印紙・その他2万円
支出合計約76万円
売却収入1,200万円
差引約1,124万円のプラス

ケースB:建物が古く、解体して土地を売った

ケースB:解体して土地を売った場合
項目金額
片付け(業者に一括)40万円
解体工事(木造30坪)140万円
滅失登記(自分で)0円
相続登記(司法書士)12万円
仲介手数料(600万円で売却)24万円
支出合計約216万円
売却収入600万円
差引約384万円のプラス

ケースC:売れず、空き家のまま5年保有した

ケースC:判断を先送りして5年保有した場合
項目金額
片付け(業者)35万円
相続登記12万円
固定資産税(年8万円×5年)40万円
火災保険(年2万円×5年)10万円
水道光熱の基本料金(年2万円×5年)10万円
管理・草刈り(年6万円×5年)30万円
帰省の交通費(年3万円×5年)15万円
支出合計約152万円
収入0円
差引約152万円のマイナス

先送りにもお金がかかっている

ケースCは何もしていないように見えて、5年で150万円以上出ていっています。しかもこの間に建物は傷み、売れる可能性は下がります。「決められないから保留」も、コストのかかる選択だと知ったうえで選ぶことが大切です。

費用を下げる7つの方法

  1. 複数社から見積もりを取る最も効果が大きい方法です。片付けも解体も、3社比較で数十万円変わることがあります。
  2. 自分で仕分けを済ませておく業者の作業時間が減れば、その分だけ人件費が下がります。
  3. 買取と組み合わせる貴金属、着物、工具、農機具。処分費を払う前に査定へ。
  4. 自治体の補助金を調べる老朽危険家屋の解体に補助金を出す自治体があります。数十万円単位で効きます。
  5. 相続登記を自分でやる書類集めに時間はかかりますが、司法書士報酬の5万〜15万円が浮きます。
  6. 繁忙期を避ける年末年始と3月は片付け・引越しともに料金が上がります。
  7. 解体費を売主負担にしない交渉をする買主が解体を前提に購入する場合、古家付きのまま売れることがあります。解体費を丸ごと節約できます。

節約してはいけないところ

逆に、削るとかえって高くつくのが次の3つです。

  • 許可のない安い業者に頼む:不法投棄の責任が及ぶことがあります。
  • 相続税の申告を自己判断でしない:特例を使うには申告が必要な場合があります。
  • 境界を確定させないまま売る:後から近隣とトラブルになり、損害賠償に発展することがあります。

口座が凍結されて払えないとき

実家じまいの費用を親の預金から出そうとしたら、口座が凍結されていて動かせない。よくある行き詰まりです。金融機関は名義人の死亡を知ると口座を止めるため、相続手続きが終わるまで引き出せなくなります。

預貯金の仮払い制度

2019年から、相続人が単独で一定額まで引き出せる制度があります。葬儀費用や当面の支払いのために設けられたものです。

引き出せる金額

相続開始時の預金額 × 3分の1 × その相続人の法定相続分

ただし、同一の金融機関からは150万円が上限です。

例:預金600万円、相続人が子2人の場合
600万円 × 1/3 × 1/2 = 100万円まで、1人で引き出せます。

必要な書類

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍(相続人を確定できるもの)
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 引き出す人の印鑑証明書と本人確認書類

金融機関によって必要書類が異なるため、事前に電話で確認してから行ってください。法定相続情報一覧図があれば、戸籍の束の代わりになります。

相続放棄を考えているなら使わないこと

この制度で引き出したお金を葬儀費用以外に使うと、相続を承認したとみなされ、相続放棄ができなくなるおそれがあります。借金の有無がはっきりしないうちは、手をつけないでください。詳しくは相続放棄と実家をご覧ください。

それも難しい場合

相続人の誰かが立て替えるのが現実的です。その際は、必ず領収書を保管し、何にいくら使ったかを記録してください。遺産分割の際に精算できます。片付けを分割払いに対応している業者もあるため、見積もりのときに聞いてみる価値はあります。

費用は誰が払うのか

法律上の決まりはありませんが、実務では次のような形が多く見られます。

  • 相続財産(現金)から支払う:最も分かりやすく、もめにくい形です。
  • 家を相続する人が負担する:家をもらう代わりに費用を持つ、という考え方です。
  • 相続人で等分する:作業を分担できない場合の落としどころになります。
  • 売却代金から精算する:先に立て替えて、売れたときに清算します。

立て替えたら必ず領収書を残す

誰かが立て替える場合、領収書と支払いの記録を必ず残してください。あとで「本当にその金額だったのか」と疑われると、家族関係に傷が残ります。表計算ソフトでも手書きのノートでも構いません。使った日・内容・金額・支払った人を記録しておきましょう。

兄弟間の負担の決め方は兄弟でもめない進め方で詳しく扱っています。

このページのよくある質問

実家じまいの費用は相続税の計算で差し引けますか。

葬式費用は相続財産から差し引けますが、遺品整理や家の解体の費用は、原則として相続税の計算では控除できません。ただし、売却時の譲渡所得の計算では、解体費用が譲渡費用として認められる場合があります。詳しくは税理士にご確認ください。

お金がなくて片付けを頼めません。

自分たちで少しずつ進める、自治体のクリーンセンターへ持ち込む、買取で費用の一部をまかなうといった方法があります。相続財産に預貯金があるなら、そこから支払うのが本来の形です。

解体費用を売却代金から払うことはできますか。

買主が決まっていれば、決済のタイミングに合わせて支払う段取りを組める場合があります。不動産会社に相談してみてください。ただし、解体してから売る場合は先に支払いが必要になるのが一般的です。

空き家のまま持っているといくらかかりますか。

固定資産税、火災保険、水道光熱の基本料金、管理費用で年10万〜30万円が目安です。さらに勧告を受けて住宅用地の特例が外れると、固定資産税が数倍になります。