売る・貸す・解体の判断軸

正解は家によって違います。需要、建物の状態、再建築の可否、境界、査定額。この5つを確認すると、選ぶべき道はかなり絞られます。

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4つの選択肢と、それぞれの向き不向き

実家の出口は、大きく4つです。どれが正解かは家の条件で変わります。

実家の出口の選択肢
選択肢向いている場合必要なお金リスク
売る(古家付き)土地に需要がある。建物が使える状態片付け+仲介手数料希望額で売れないことがある
売る(解体して更地)建物が古く、買主が更地を求めている片付け+解体100万〜200万円売れないと更地で税負担だけ増える
貸す駅や学校が近い。修繕費を回収できる見込み修繕50万〜300万円借り手がつかない。退去後の原状回復
解体して土地活用駐車場などの需要がある解体+整備費需要を読み違えると赤字
持ち続ける数年内に使う予定がある年10万〜50万円劣化が進み、選択肢が狭まる

判断を分ける5つの条件

次の5つを確認すると、選ぶべき道がかなり絞られます。

1. 土地に需要があるか

最も重要な条件です。駅からの距離、学校や商業施設の有無、周辺の空き家率。需要があるなら売却も賃貸も選べますが、需要がなければ選択肢は一気に狭まります。まず不動産会社の査定を受けて、市場の評価を知ることが出発点です。

2. 建物が使える状態か

築年数だけでなく、雨漏りの有無、シロアリ、傾き、水回りの状態を見ます。1981年6月以降の建築確認(新耐震基準)かどうかも大きな分かれ目です。使える建物なら古家付きで売る、または貸すという選択肢が残ります。

3. 再建築ができる土地か

ここを見落とすと判断を大きく誤ります。建物を建てるには、幅4メートル以上の道路に2メートル以上接している必要があります(接道義務)。これを満たさない土地は「再建築不可」となり、建物を壊すと二度と家が建てられません。市街化調整区域の土地も、建築に制限があります。

再建築不可の場合、解体はほぼ選択肢から外れます。古家付きのまま売る、リフォームして貸す、隣地の所有者に売る、といった方向を検討することになります。

4. 境界が確定しているか

隣地との境界が不明確だと、売却時に測量と境界確定が必要になります。費用は35万〜80万円程度、期間も数か月かかります。古い家ほど境界標がなくなっていることが多く、隣地所有者の協力も必要です。

5. いくらで売れるか

すべての判断の前提になる数字です。査定額が分からないと、解体費をかける価値があるのか、貸したほうが得なのかを計算できません。

まず査定を受けてから考える

「売るかどうかまだ決めていないから査定は先」と考える方が多いのですが、順序が逆です。いくらで売れるか分からないまま、売るか貸すかは決められません。査定は無料で、査定を受けたからといって売る義務はありません。家族での話し合いも、数字が入ると一気に前へ進みます。

売るという選択

古家付きで売るか、更地にして売るか

古家付きと更地の比較
古家付きで売る解体して更地で売る
初期費用片付け費用のみ片付け+解体費100万〜200万円
売却価格解体費の分だけ安くなることが多い更地のほうが高く売れる傾向
買主の層解体前提の業者、リフォーム希望者住宅を建てたい個人、建売業者
固定資産税住宅用地の特例あり特例なし(売れるまで負担が増える)
空き家の3000万円控除耐震改修または解体が条件(買主による解体でも可)使える
リスク買い手が限られることがある売れないと税負担だけが残る

結論としては、まず古家付きで売り出してみて、反応を見てから解体を判断するのが安全です。買主が「自分で解体するので古家付きで」と言うケースは多く、その場合は解体費を丸ごと節約できます。

売却の税金

相続した実家を売る場合、条件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。使えるかどうかで税額が数百万円変わることもあるため、必ず確認してください。詳しくは売却の流れと税金へ。

貸すという選択

「売るのは忍びないが、空けておくのももったいない」という場合の選択肢です。ただし、現実は簡単ではありません。

貸す前に必要な費用

賃貸に出すための修繕費の目安
項目費用の目安
水回りの交換(キッチン・浴室・トイレ)100万〜250万円
内装(壁紙・床)30万〜100万円
給湯器・エアコン20万〜50万円
雨漏り・シロアリの補修20万〜200万円
ハウスクリーニング5万〜15万円

合計すると、100万〜300万円かかることが珍しくありません。月6万円で貸せたとしても、回収に3〜4年かかる計算です。その間、固定資産税と管理費もかかります。

それでも貸すメリット

  • 建物が使われるため、劣化が止まる(人が住む家は傷みにくい)
  • 住宅用地の特例が維持される
  • 将来、自分や子どもが住む可能性を残せる
  • 売り時を待てる

注意点

  • 借主は簡単には出せません:普通借家契約では、貸主から契約を終了させるには正当な事由が必要です。「自分が住みたくなった」だけでは通りません。期間を区切りたい場合は定期借家契約を使います。
  • 管理の手間:設備の故障対応、家賃の督促。不動産会社に管理を委託すると、家賃の5%程度が費用としてかかります。
  • 空室リスク:地方の一戸建ては借り手が限られます。事前に不動産会社に「貸せるか、いくらで貸せるか」を確認してください。

DIY可・現状渡しという方法

修繕費をかけられない場合、「現状のまま貸すかわりに家賃を安くし、借主が自由に手を入れてよい」という契約方法があります。古民家や地方の物件で増えている形です。取り決めを明確にしておく必要がありますが、初期費用を抑えて貸し出せます。

解体という選択

解体は「壊せばすっきりする」という単純な話ではありません。判断の前に、次の3点を確認してください。

  1. 再建築が可能な土地か:再建築不可なら、解体は原則として避けるべきです。
  2. 売れる見込みがあるか:更地にしても売れなければ、税負担が増えるだけです。
  3. 補助金が使えるか:自治体の解体補助金は着工前の申請が条件です。

解体が向いているのは、次のような場合です。

  • 建物が老朽化し、倒壊の危険がある(近隣への責任を避けたい)
  • 買主が更地を希望している(売買契約後に解体するのが理想)
  • 駐車場など、土地活用の需要が確実にある
  • 自治体から特定空家等の指導・勧告を受けている

費用と補助金は解体費用と補助金にまとめました。

判断の流れをまとめると

  1. 不動産会社に査定を依頼する複数社に依頼して、金額の幅と根拠を比べます。同時に「古家付きで売れるか」「貸せるか」も聞きます。
  2. 再建築の可否と境界を確認する役所の建築指導課で接道状況を確認できます。境界標の有無も現地で確認します。
  3. 建物の状態を見てもらう雨漏り、シロアリ、傾き。必要ならホームインスペクション(住宅診断)を受けます。5万〜10万円程度。
  4. 3つのシナリオで金額を出す①古家付きで売る ②解体して売る ③貸す。それぞれの収支を紙に書いて比べます。
  5. 家族に数字を共有する感情ではなく数字で議論できるようにします。
  6. 期限を決めて実行する「半年売り出して反応がなければ価格を見直す」など、次の判断のタイミングを先に決めておきます。

このページのよくある質問

解体してから売るのと、古家付きで売るのはどちらが得ですか。

多くの場合、まず古家付きで売り出すほうが安全です。買主が解体を前提に購入することは珍しくなく、その場合は解体費を負担せずに済みます。売れ行きを見てから解体を判断してください。

再建築不可の土地でした。どうすればよいですか。

解体は避け、古家付きのまま売るかリフォームして貸す方向が現実的です。また、隣地の所有者に買ってもらう(隣地と合わせれば接道要件を満たすことがある)という方法も有力です。

賃貸に出したいのですが、修繕費が用意できません。

現状渡しで家賃を下げる方法や、DIY可の条件で貸す方法があります。ただし、雨漏りやシロアリなど構造に関わる不具合は、貸す前に直す必要があります。

親族が「売るな」と言います。

維持にかかる年間費用と、誰が管理を担うのかを具体的な数字で示してください。「売りたくない」なら、その人が管理と費用を引き受けられるかという話になります。感情の対立を、役割分担の話に置き換えるのが有効です。