実家の農地・山林をどうするか

地方の実家では、家と宅地のほかに田畑や山林がついてくることがあります。これらは宅地とまったく違うルールで動きます。

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まず、何を持っているのかを確認する

実家が地方にある場合、家と宅地のほかに田畑や山林を持っていたことが、あとから分かるケースがよくあります。本人も把握していないことがあります。

確認の方法

  1. 固定資産税の納税通知書を見る課税明細に、所有している土地が一覧で載っています。地目(田・畑・山林・原野)も確認できます。
  2. 市区町村で名寄帳を取るその市区町村内で、その人が所有する不動産がすべて載ります。納税通知書に載らない免税点未満の土地も分かります。
  3. 複数の市区町村にまたがる可能性を考える名寄帳は市区町村ごとです。隣の市に土地がある場合、そこでも取る必要があります。
  4. 登記事項証明書で権利関係を確認する共有になっていないか、抵当権が残っていないか。

免税点未満の土地は通知書に載らないことがある

固定資産税には免税点があり、同一市区町村内の課税標準額の合計が土地30万円未満であれば課税されません。この場合、納税通知書自体が届かないため、所有していることに気づけません。山林や原野は評価額が低いため、これに該当することがあります。名寄帳を取ると確認できます。

農地は自由に売れない

農地は、宅地とはまったく別のルールで動きます。食料生産の基盤を守るため、農地法によって売買や転用に制限がかかっています。

農地でできることと必要な手続き
やりたいこと必要な手続き難易度
農地のまま、農業をする人に売る農地法3条の許可(農業委員会)買い手が農家に限られる
農地のまま貸す農地法3条の許可、または農地中間管理機構を通す比較的やりやすい
宅地などに変えて自分で使う農地法4条の許可(都道府県知事など)市街化調整区域では難しい
宅地などに変えて売る農地法5条の許可市街化調整区域では難しい
市街化区域の農地の転用農業委員会への届出のみ比較的容易

相続したら10か月以内に届出が必要

農地を相続した場合、農地の所在地の農業委員会に届け出る義務があります。期限は、相続の開始を知った時からおおむね10か月以内。届け出ないと10万円以下の過料の対象になります。相続登記とは別の手続きなので、忘れやすい部分です。

耕作しない農地はどうするか

  • 農地中間管理機構(農地バンク)に貸す:都道府県ごとに設置された組織が、農地を借りて担い手にまとめて貸し出す仕組みです。個人で借り手を探すより現実的です。
  • 近隣の農家に貸す・売る:地域の農業委員会やJAに相談すると、話がつながることがあります。
  • 市民農園として貸す:制度を使えば、農地のまま区画に分けて貸せる場合があります。
  • 相続土地国庫帰属制度を使う:条件を満たせば国に引き取ってもらえます。

放置すると課税が強化されることがある

農業委員会の調査で「遊休農地」と判断され、利用の意向調査に応じず放置を続けると、固定資産税の評価が引き上げられる取り扱いがあります。逆に、農地中間管理機構に貸し付けた農地は、一定期間の固定資産税が軽減される制度もあります。放置よりも、貸すほうが有利になるよう設計されています。

山林は境界が分からないことが多い

山林の相続で最も多い問題が、どこからどこまでが自分の土地なのか分からないことです。何十年も人が入っておらず、境界の杭も目印の木もなくなっているケースが珍しくありません。

相続したら90日以内に届出

森林法により、森林の土地を相続などで取得した場合、取得した日から90日以内に市町村長へ届け出る必要があります(地域森林計画の対象となっている森林の場合)。こちらも相続登記とは別の手続きです。

山林で起きやすい問題

  • 境界が不明:売るにも貸すにも、範囲が確定しないと話が進みません。地籍調査が済んでいる地域かどうかを市町村に確認してください。
  • 手入れがされず荒れる:間伐されない人工林は、土砂災害のリスクを高めます。
  • 倒木による被害:道路や隣地に木が倒れると、所有者の責任が問われることがあります。
  • 売れない:木材価格が低く、搬出コストのほうが高くつくことが多いため、買い手がつきにくいのが実情です。

山林の選択肢

  • 森林経営管理制度を使う:手入れができない森林について、市町村が経営管理を引き受け、意欲のある林業経営者につなぐ制度です。まず市町村の林務担当課に相談してください。
  • 森林組合に相談する:管理の委託や、間伐の相談ができます。
  • 隣接する所有者に譲る:まとまった面積になることで価値が出ることがあります。
  • 相続土地国庫帰属制度:森林も対象になり得ますが、負担金は面積に応じて算定されます。

固定資産税は安いが、それが判断を鈍らせる

山林の固定資産税は年に数千円ということも多く、「持っていても大した負担ではない」と感じがちです。しかし、境界が分からないまま次の世代に渡すと、相続人が増えて手がつけられなくなります。負担が軽いうちに、境界と権利関係だけは整理しておくことをおすすめします。

相続土地国庫帰属制度で農地・山林を手放す

2023年4月に始まったこの制度は、宅地だけでなく農地や山林も対象です。ただし、要件を満たす必要があります。

引き取ってもらえないケース

  • 建物や工作物、車両、樹木などが残っている(伐採が必要な立木は対象外になる場合があります)
  • 境界が明らかでない、所有権に争いがある
  • 崖があって管理に過分な費用がかかる
  • 土壌汚染や埋設物がある
  • 通路など、他人による使用が予定されている

費用

相続土地国庫帰属制度の費用
項目金額
審査手数料土地1筆あたり14,000円(不承認でも返還されません)
負担金(宅地・田畑・雑種地)原則20万円(市街化区域の宅地や一部の農地は面積に応じて算定)
負担金(森林)面積に応じて算定

申請の前に、法務局(本局)で相談ができます。要件を満たすかどうかの目安を教えてもらえるので、まずここから始めるのが確実です。

進め方のまとめ

  1. 名寄帳と納税通知書で、所有している土地をすべて洗い出す市区町村ごとに取得します。
  2. 地目を確認する宅地・田・畑・山林・原野。地目によって手続きがまったく違います。
  3. 相続登記をする3年以内。すべての土地が対象です。
  4. 農地なら農業委員会へ、森林なら市町村へ届け出る農地は10か月以内、森林は90日以内。相続登記とは別の手続きです。
  5. 地元に相談する農地は農業委員会とJA、森林は市町村の林務担当課と森林組合。
  6. 使い道がなければ、貸す・譲る・国庫帰属を検討する放置がいちばん不利になります。

このページのよくある質問

農地を相続しましたが、農業をするつもりはありません。

農地中間管理機構(農地バンク)への貸し出しが現実的な選択肢です。近隣の農家に貸す、売るという方法もありますが、いずれも農業委員会の関与が必要です。まずは農地のある市町村の農業委員会に相談してください。

山林の場所が分かりません。

登記事項証明書の地番をもとに、法務局で公図を取得し、市町村の林務担当課や森林組合に相談すると、おおよその位置が分かることがあります。境界の確定には土地家屋調査士の関与が必要になります。

農地や山林も相続登記の対象ですか。

対象です。地目に関わらず、相続した不動産はすべて3年以内の登記が義務です。数が多い場合は、まとめて申請できます。

使っていない農地の固定資産税はいくらですか。

農地の評価は宅地よりかなり低く、年数千円から数万円程度のことが多いです。ただし、遊休農地と判断され利用意向調査に応じない場合、課税が強化される取り扱いがあります。