「とりあえず共有名義」が10年後に招くこと
話し合いがまとまらないとき、いちばん選ばれやすいのが「とりあえず兄弟で共有」という結論です。公平に見えますが、実は問題を先送りしているだけです。
その場は丸く収まる
実家をどうするか決まらない。誰も住まないが、売るのは寂しい。兄弟の意見も割れている。そこで「じゃあ3人の共有名義にしておこう」となります。
この時点では、誰も損をしていないように見えます。登記もできますし、費用も分け合えます。問題は、ここから先です。
5年後、10年後に起きること
売りたいときに売れない
共有名義の不動産を売るには、共有者全員の同意が必要です。3人のうち1人が「まだ売りたくない」と言えば、売却は止まります。持分だけを売ることは法律上できますが、実際に買う人はほとんどいません。
権利者が増えていく
共有者の1人が亡くなると、その持分はその人の相続人(配偶者と子)に引き継がれます。3人だった共有者が5人になり、7人になります。次の世代では、いとこ同士で連絡を取り合うことになります。
誰も管理しなくなる
「みんなのもの」は「誰のものでもない」になりがちです。草刈りも、固定資産税の支払いも、誰か1人が担い続け、その人の不満がたまります。
意見の違いが金銭に変わる
共有物の分割を求めて裁判になることもあります(共有物分割請求)。裁判所が競売を命じれば、市場価格より安く売られることになります。
では、どうすればよかったのか
誰も住まないなら、換価分割——売って現金で分ける——が最もすっきりします。金額が明確で、全員が同じ基準で受け取れるためです。
誰かが住むなら代償分割。住む人が実家を相続し、他の相続人に相応の現金を払います。
どうしても今は決められない場合でも、「共有名義にする」ではなく「1人の名義にして、期限を決めて売却し、代金を分ける」という取り決めを書面にするほうが、はるかに安全です。この場合は換価分割であることを遺産分割協議書に明記しておかないと、代金を分けたときに贈与とみなされるおそれがあるので注意してください。
兄弟でもめない進め方で、分け方の比較を詳しく扱っています。